午前7時になると、サルファラーズはインド大使館に歩いて行った。職員が1人見えたので、大声を上げて走り寄り、インドに帰国できるよう取り計らってくれと懇願した。すると別の職員が紙とペンを持って出てきて、問題を全て書き出すよう言い、それが済んだら軍に戻るよう促した。

「涙ながらに『戻りたくない』と訴えても、軍での問題には介入できないと言うばかりだった」と、サルファラーズは振り返る。

カフェに戻った彼は、パンジャブ出身の男性から、ラディ・ベルジアムというユーチューバーのことを教えてもらった。モスクワから陸路でベラルーシとポーランドを経由して、ベルギーに入り、今はそこに住んでいるという男性だ。

同じルートをたどりたいフォロワーがいれば力になるという。その動画は、いわば運び屋のCMになっていた。

人間性のかけらもない世界

意を決したサルファラーズがベルジアムに電話して、言われたとおり5万ルーブル(約8万9500円)の手付金を支払うと、ベルジアムは泊まる場所を手配してくれた。

ワンルームのアパートで、12人のインド人と一緒だ。それがモスクワのどこだったのか、サルファラーズは覚えていない。ただ薄暗く、つんと鼻を突く臭いがしたことは覚えている。

冷たい床に寝泊まりして2週間。2月3日の早朝、1台の車が迎えにきて、サルファラーズほか3人を乗せると、ベラルーシの首都ミンスクを目指して走り出した。

検閲に引っかかり「絶体絶命」
【関連記事】