<好感度の低すぎるフォークシンガーの肖像に主演ティモシー・シャラメのファンはドン引き間違いなし、それでもアカデミー賞主演男優賞に向けて気合は十分──(米誌記者レビュー)>

ホラー映画じゃあるまいし、ボブ・ディランの伝記映画にドッキリが仕掛けられているとは思いもしなかった。

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』予告編

新作映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の序盤で、ティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet)演じる若きディランが名刺を受け取る。するとカメラが手元にズームインし、映画史上まれに見る奇っ怪な爪を映し出すのだ。

爪は長く、とがっていて、汚れ具合から察するに、数週間前に故郷ミネソタ州を出てから一度も洗っていない。

ネイル担当にはブラボーと言いたい。インパクトは強烈だし、1960年代のディランの写真を見れば分かるとおり、実物そっくりだ。

とはいえ、あの爪は筆者が『名もなき者』に対して抱いていた不安、すなわち大好きなシャラメを見る目が変わってしまうのではないかという恐れを改めてかき立てた。

@fandango Timothée Chalamet really nailed the role of Bob Dylan in #ACompleteUnknown. See his work come to life in theaters now! Get your tickets at the link in bio. #timotheechalamet #movietok #filmtok #bobdylan #holiday ♬ original sound - Fandango
ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディランの長く尖った爪が見られる

私のシャラメ愛は『名もなき者』の試練に耐えられるのか。それを言うなら、世間のファンはどうなのか。

彼の事務所もやきもきしているに違いない。映画を見て、そう私は確信した。

説明させてほしい。まず、演じる役柄と現実のシャラメは分けて考えられるはずだ。私は彼が人食いの青年に扮した『ボーンズ アンド オール(Bones and All)』も見たが、問題はなかった。

映画『ボーンズ アンド オール』予告編 2023年2月17日(金)公開

良くも悪くもスターが演じるキャラクターは、私たちの潜在意識に焼き付く。だからこそ一部の俳優は悪役をやりたがらない。だからこそ、大統領選への出馬が噂されたロック様ことドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)がいつか本当に大統領になるかもしれない。

こうしたことは理屈ではないし予想もできない。人食い青年やチョコレート職人のシャラメは受け入れられても、フォークシンガー役は受け付けないかもしれない。

ぐうたらな音楽家ディランにイラつく?
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