『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディラン
19歳でニューヨークに出てきたディランの青春を描く ©2025 SEARCHLIGHT PICTURES.

救いは怒濤の宣伝活動

憧れのスターをこんなふうにけなすのはつらい。けれども私に関していえばドン引きする要素が憧れをしのぎ、映画のほかの部分が目に入らないほどだったのだ。

周囲の映画評論家の中には、彼の演技を高く評価する人もいる。それはそれで結構だが、一人のファンとしては同意できない。

最終的に私がファンをやめずに済んだのは、猛烈な宣伝活動のおかげだった。

シャラメはポッドキャストをはしごして映画を売り込むだけでなく、スポーツ専門局ESPNのアメフト番組『カレッジ・ゲーム・デー(College GameDay)』にゲストで出演した。

さらにはインスタグラムで生配信を行い、ブラック・アイド・ピーズ(The Black Eyed Peas)の「アイ・ガッタ・フィーリング(I Gotta Feeling)」に合わせて踊った。

これだけやって注目されないわけがない。実際、メディアはシャラメの宣伝を「天才的」「史上最高」とたたえる。

なぜここまで必死なのか。主演男優賞をはじめせっかくノミネートされたのだから、アカデミー賞が欲しいのは分かる。だが通常のオスカー狙いのキャンペーンより力が入っている。徹底して大衆的で、アート系映画の匂いはない。

ディランとシャラメの差を見せつける?
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