ある60歳の男性によると、交友関係の広かった父はクルマに乗れなくなってからはシニアカーであちこちに出掛けて余生を楽しんだという。ある女性はカラオケ好きで1日1回歌うことを日課としていて、シニアカーをとことこと走らせてカラオケ喫茶に通っていた。この他にもシニアカーに乗っていきいきと暮らした高齢者の事例を何件も耳にした。
免許返納問題に直面する高齢者は地縁が強く、クルマを運転してもその範囲は市内に収まる人が多い。また新型コロナウイルス流行でテレワークが普及し、自宅付近で生活が完結する若者も増えた。
今はまだ珍しいシニアカーだが、クルマのように一般的な移動手段として浸透すれば、高齢者のひきこもり、家族内送迎やその仲違いが減り、自治体の医療・介護費用の負担の軽減にも寄与する部分が多いのではないかと筆者は考えている。
若者を介護から救うシニアカー
福井県勝山市では2025年以降、少子高齢化の進行によって若者が働きながら高齢者を介護しないといけないという問題に直面する。このままでは勝山が2040年には消滅してしまうと危機感を募らせている。それに対して、勝山市のまちづくり団体「ケア・ブレイクかっちゃま」は、シニアカーを活用してこの問題を解決しようとしている。高齢者ができるだけシニアカーに乗り、自分で買い物や病院に行ったり、畑仕事をしたり、友人に会いに行くなど、自立した生活を送ることで生活の質を保てると考えるからだ。
また四国などの離島では、シニアカーがたくさん走っていて、クルマに乗れなくなった女性のファーストカーとして機能している事例も耳にする。
新しいパーソナルモビリティのトレンドニュースが入ってくるたびに流行りに流されるのではなく、持続可能な地域づくりのためにどの移動手段を使うと現実的なのかを考えていく必要がある。それぞれの特性を見極めて、家族タクシーや介護に頼らずに自ら移動できる期間(移動寿命)を伸ばし、年をとっても一人ひとりがいきいきと暮らせる地域を築いていってほしいと思う。
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