<楽観的な専門家に対比して未曽有の危機に立ち向かい、リスクを取ってメディアで発言する岡田晴恵氏の姿がヒロイックに描かれるばかり――そこにサイエンスはあるのか?>

今回のダメ本

ishidoAMAZON220316-02.jpg『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録

岡田晴恵[著]

新潮社

(2021年12月20日)

テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』が、新型コロナ報道で一つの立場を代表して牽引してきた番組であることは間違いない。著者は名物コメンテーター・玉川徹氏と共に連日のように出演し、「徹底的なPCR検査と隔離」を強く訴え、国の姿勢や今も分科会に名を連ねる専門家を徹底的に批判してきた。付いた異名は「コロナの女王」。「いつでも、どこでも、何度でも検査を受けられるモデル」を目指す世田谷区のように、その主張に歩み寄るような自治体も出てきた。彼らは現実にも一定の影響力を持ったのだ。

本書で描かれるのは、あくまで岡田氏というフィルターを通して描かれる新型コロナ禍だ。強い批判の対象になっている、初期から現在まで国に助言をしてきた尾身茂氏ら専門家、 逆に理解のある政治家として描かれる田村憲久・前厚労相との赤裸々なやりとり――もっとも、どこまでが事実なのかはなかなか分からないのだが――はそれなりに興味深い。実 際に記述どおりだとするのならば、 田村氏は「ゼロコロナ」のような幻想を早々に諦め、新型コロナに合わせた医療体制の整備に突き進んでいたことになる。その姿勢は大いに賛同できる。

だが本書のほとんどの主張は一部のメディア、医師の界隈で受けるだけにとどまるだろう。実際に診察に当たってきた多くの医療従事者にとっては看過できない主張が、いまだに注釈なく記されているからだ。

一例を挙げよう。岡田氏は2021年年初めの第3波到来時に、こんな訴えを田村氏にしたという。「アビガンがダメなら、せめてイベルメクチンを国民にお願いします。イベルメクチンの安全性は担保されています。どうして効くのかははっきりしませんが、いろいろなウイルスで増殖抑制がみられます」

イベルメクチンに対する幻想
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