周囲の爆撃の状況を伝えたベイカーさんのツイートに多くの海外メディアも注目し、「今夜、私は死んじゃうかもしれない」というツイートは1万5547回のリツイートがあった。一連のツイートはガザ市民に対する同情を引き出しただけでなく、「イスラエルの軍事行動に対して、国際社会の激しい怒りを掻き立てた」と、パトリカラコス氏は言う。
武力ではイスラエルに勝ち目がないパレスチナは「ナラティブ戦でしかイスラエルに対抗できない」とパトリカラコス氏は分析する。
イスラエル側も対抗
一方のイスラエル側も、ナラティブのレベルで勝つ必要がある。イスラエルの武力行使に正当性を与えられるのは、「物語のレベルしかないから」だ。
戦争時のナラティブ戦では、交戦地帯の「生のデータ(たとえ真実味を欠くデータであっても)を戦場から拾い出して、情報戦に投入する」。
国際社会は「このデータを処理して、その戦争に対する態度を決める」。大衆レベルと、政治レベルにおいて「どこを非難し、支持するのか」が決まってゆく。
イスラエル国防軍英語版のソーシャルメディアプラットフォーム編集長ダニエル・ルーベンスタイン氏は、ツイッターをソーシャルメディアの中でも最重要視する。フェイスブックでもコンテンツを急速に拡散できるが、「友達」中心にしか届かない。しかし、ツイッターならイスラエル側の見解を理解してくれそうなたくさんの「浮動票」にも情報を届けられる。
世論を味方につけるためにはいくつかのテーマを設定し、情報のビジュアル化に力を入れる。グラフィックや動画を多用し、「コンテンツそのものがメッセージを語る」ようにする。
場合によってはジャーナリストにショートメールを使って情報を出すこともある。「ショートメールを使えば、記者が必ず読む」し、内容をツイートすることが多いからだ。これが「第3者による増幅」となり、発信するコンテンツの正当性が増すのである。
「最後は、誰も信じなくなる」
第6章にはロシアの「トロール(荒らし)工場」(フェイクニュースの拡散拠点)の1つで働いていたヴィターリ・ベスパロフ氏が登場する。
彼の仕事は、ロシア語を話すウクライナ住民を対象にしたウェブサイトで、親欧米のウクライナ政府軍を批判することだった。ウクライナ軍がある地域を制圧したと聞けば、「それは嘘だ」と書いた。他のスタッフは「ウクライナ人のブロガー」になりすまし、首都キエフの幼稚園に十分な食料がないなど、ウクライナが悲惨な状況にあることを強調する記事を執筆した。
