ことはそう簡単なものではないことが、本書を読むとわかる。テクノロジーの発達で何がフェイクかを見極めにくくなっている上に、二つの異なる勢力が対立状態にあるとき、どちらかの一方にいる人は反対側の論調が見えにくい状態になる。筆者が住むイギリスのような、独立したメディアが存在する国でもそうである。
また、たとえ両方の主張に目を通すことができたとしても、展開される論理を比較するというよりも、感情やビジュアルに訴えるソーシャルメディアを駆使した情報拡散手法に心が動かされやすい。心情的に肩入れするように作られているがために、そう判断してしまいがちなのだ。
ただ、「どんな手口を使って情報を拡散しているか」「自分たちの主張をどのように正当化しているか」は、本書を通してよく分かる。
ネット上の情報を駆使し、仲間とともに事実を掘り起こすベリング・キャットのようなリサーチャーたちが存在することも心強い。
『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』は、フェイクニュースという「敵」を複眼的に理解するために、また世界が今どのように動いているかを知るためにも勉強になる1冊だ。
巻末に掲載されている、フリージャーナリスト、安田純平氏による解説も非常に読み応えがある。
(在英ジャーナリスト、小林恭子)

※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。
