まれに経営者が壁になってくれず、「当事者同士でうまくやってくれ」などと逃げ腰な姿勢をとることもありますが、こうなるともうお手上げ。できる限りリスクを減らしたい人事部の言い分が通ってしまいます。

ノウイング・ドゥイング・ギャップ

私は、クライアント企業の現場に入ると「理解=言葉×体験」という公式を必ず伝えます。

どんなに言葉をインプットしても、体験しなければ理解しようがない、ということです。

頭ではわかっているけど、なかなか体が言うことをきかない。わかっちゃいるができないことを「ノウイング・ドゥイング・ギャップ(Knowing-Doing Gap)」と呼びます。知っていることと、やっていることに、ギャップがある、という意味です。

この状態を抜け出すためには、無理やりにでも行動をすることです。

経験の浅い人に「やればわかる」ことを理解させるためには、まず行動してもらうことです。グダグダ考えていても仕方がない。やればわかることなら、やる必要があるのです。

にもかかわらず、何か新しいことをしようとするたびにヘリコプター上司やヘリコプター人事部が「まず行動しろなんて乱暴だ。新人にも意味がわかるように説明しろ」とか「マニュアルを整備しないと若手はわからない」などと介入してくると、いつまで経っても話が前に進みません。

意外と本人たちは、「まずはやってみますよ」「やってみないことにはわからないので、やります」と言っているのにもかかわらず、です。

ベテランになればなるほど、わかっちゃいるけど、なかなかできない......つまり現状維持バイアスがかかるもの。

ですから自分たちが「理屈がわからないことはできない」という考え方を持っていると、新人も同様に同じように考えるという先入観を持ってしまいます。

実際は、経験の浅い若い人ほどバイアスはかかりません。思考プログラムは、過去の体験の「インパクト×回数」でできています。過去の体験が乏しい若者たちは、まだ柔軟性があり、意外に「理屈がわからないことでもやってみよう」とするのです。

ベテラン社員の価値観で干渉されると、育つ若者も育っていきません。

私たちコンサルタントが苦労するのは、部長や課長の意識改革であって、若い人たちではありません。若者ほど、意外と短い期間で意識を変え、すんなりと新しいやり方に順応します。

先入観や思い込みが強くなっているベテラン上司や、現場のことを良く知らない人事部がナーバスになりすぎ、若い人たちの毎日の仕事に強く干渉する行為は「人材教育」の観点に反しています。放置はもちろんいけませんが、バランスが大切で、「甘やかせ過ぎ」は当然にダメなのです。

部下に強い関心を持つのは大切ですが、もっと大切なのはお客様です。事業はお客様で成り立っているのですから、その姿勢をもっとお客様に対して向けるべきです。社内ではなく、社外に目を向け、お客様やマーケットに対して、過干渉であるべきです。