一般的な経済学では、インフレの時には金利を引き上げるのが常道だ。ところが、エルドアンは経済成長を優先し、金利を引き下げてきた。これが完全に裏目に出たわけだ。

こうしたなか、トルコ中央銀行が抱える外貨建ての負債は1500億ドルを超えるとみられ、債務不履行(デフォルト)を避けるため、保有する金の売却すら始めているといわれる。

野村ホールディングスは昨年11月、世界でもとりわけ経済・金融が不安定化している7カ国をあげた。そこには昨年デフォルトに陥ったスリランカなどとともにトルコも名を連ねている。

「中立」を放棄することはない

経済破綻を防ぐため、トルコは各方面から借入を増やしている。とりわけ周辺のアラブ産油国からの資金協力は多く、例えばサウジアラビアは6月、50億ドルをトルコ中銀に預け入れることに合意した。

また、中国からは通貨スワップ協定に基づく調達額を60億ドルにまで増やし、ロシアとも最大40億ドルの天然ガス輸入支払いの延期に合意したといわれる。

とはいえ、こうした状況はエルドアンにとって望ましいものではない。

エルドアンのもとでトルコは、どの勢力とも接近しすぎないことで存在感を高めた。その意味ではサウジ、中国、ロシアに頼りすぎることは避けなければならない。

そのため、エルドアン政権がEUからの資金協力に期待しても不思議ではない。

EIB(ヨーロッパ投資銀行)は今年3月、トルコの地震復興向けという名目で5億4000万ドルを提供することに合意した。2019年にEU加盟国であるキプロスの沖合でトルコが海底ガス田を採掘したことへの制裁として、EIBはトルコ向けの資金協力を中止していた。

エルドアン政権はこうした借入を増やしたいところだろう。しかし、正面からそれを求めれば、どうしてもトルコ側が不利な立場になる。

経済的に行き詰まるトルコがEUと形式的にでも対等な立場で交渉する場合、スウェーデンのNATO加盟を認め、さらにそれと引き換えに(引っ込めるという前提で)トルコのEU加盟を持ち出すことは、数少ない取引手段といえる。

EUにとっても、資金協力で済ませられるなら、トルコを加盟国に迎える協議を行うよりずっとハードルは低くて済む。

そうだとすると、トルコがスウェーデンのNATO加盟を認めたことはあくまで自国のためであり、それをもってエルドアン政権が「親欧米」に軌道修正したとはいえず、ましてウクライナ戦争をめぐってこれまでよりロシアと敵対的になるとは想定できないのである。

<訂正とお詫び>コラム掲載時、一部事実と違う内容がありました。訂正してお詫び致します。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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