<製品の供給不足など不安材料を抱えつつも、好景気に沸くアメリカ。人手不足が賃上げと物価上昇を起こし、「インフレスパイラル」に。今後2年以内に予想される景気後退に備えて、政策はどうあるべきか?>

私たち家族の日々の暮らしでモノの値段が急激に上昇していることを最初に察知したのは、同居している86歳の義母だった。

第2次大戦中の子供時代に香港で生活していたとき、自宅のすぐそばでイギリス軍と日本軍の戦闘を目の当たりにした経験を持つ義母は、用心深い倹約家の女性に育った。昨年終盤くらいから肉と野菜の値段が大きく値上がりし始めると、すぐに目に留めるようになり、「高すぎる!」と、家族で近所の食料品店に買い物に行ったときに不満を述べた。

義母にとって、肉と野菜の値段は、世界で何が起きているかを映す鏡だ。そしてこの数カ月、義母は食材の価格が高くなっていると感じている。

その感覚は正しい。アメリカではこの1年間で、牛肉の価格が13.8%、卵の価格が11.2%上昇している。もっとも、義母の皮膚感覚ではもっと大幅に食材が値上がりしているように感じているだろう。

ボストン郊外のわが家では、物価対策として家庭菜園での野菜づくりにもっと力を入れることも検討し始めている(さすがに、体重60キロのアラスカンマラミュート犬がいる家の庭でニワトリを飼うことまでは考えていないが)。

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いまアメリカ経済は好景気に沸いている。しかし、物価上昇、労働力不足、製品の供給不足、貿易とエネルギー供給を脅かす国際的な危機、政府の金融・財政政策など、経済に深刻なリスクを及ぼしかねない要因は多い。向こう2年の間に、アメリカ経済が景気後退に陥る可能性も否定できない。

最近、アメリカではインフレが急速に進行している。5月の物価上昇率は8.6%。これは1981年12月以降で最も高い値だ。物価問題は、今年11月の中間選挙でジョー・バイデン大統領率いる与党・民主党にとって最大の脅威になっている。

ガソリン高騰が身に染みる

一般国民が自分たちの暮らし向きの良し悪しについて判断する基準になるのは、無味乾燥なインフレ率のデータよりも、食料費、エネルギー費、住宅費の動向だ(この3つの要素はアメリカの家計支出のそれぞれ29%、13%、10%を占めている)。

このいわば「庶民版」インフレ指数に照らしても、ほとんどのアメリカ人にとって物価状況は極めて厳しいと言えそうだ。

購入時よりも高く売れる