中国がデジタル人民元を発行する日は近い

2019年10月23日(水)17時15分
ロン・メンドザ

<デジタル通貨の市場導入が秒読みに入った中国、その狙いはどこにある?>

フェイスブックが提唱する暗号通貨「リブラ」が規制当局の反対やパートナー企業の撤退といった壁にぶち当たるなか、中国が国家主導のデジタル通貨発行に向けて本格始動している。

フォーブス誌は8月、中国当局が2014年から検討を重ねてきた独自の仮想通貨が今年11月にも発行されると報じた。9月には中央銀行の中国人民銀行デジタル通貨研究所長の穆長春(ムー・チャンチュン)が、デジタル通貨は「中国の通貨の自主性と合法的地位を守るためのもの」と発言。近い将来の導入は確実との見方が広がっている。

特徴は2層構造のシステムにある。まず人民銀行が発行し、それを引き受けた中国工商銀行など4つの国営銀行と、電子商取引大手アリババ・ドットコムなど3社が市場に流通させる。メッセージアプリの微信(WeChat)や電子決済サービスの支付宝(アリペイ)などでも使用可能となる見込みだ。

中国政府の後ろ盾と巨大な国内市場を有する新たなデジタル通貨が、世界の主役に躍り出る日も近いかもしれない。

<本誌2019年10月29日号掲載>

【参考記事】中国、キャッシュレス先進国ゆえの落し穴──子の借金が親に降りかかる
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※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。


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