高市首相を動かした「円安リスク」...日銀利上げ容認の舞台裏
経済・家計へのマイナス影響は
日銀が利上げに踏み切れば、焦点の一つとなるのは経済や家計への影響だ。みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏は、日銀が0.25%の利上げを実施した場合、国債利払い費が年間2.76兆円増えるほか、金融以外の法人企業部門の利払費も1.42兆円増えると試算する。
一方、家計は住宅ローンの利払費0.59兆円、それ以外の利払費0.33兆円の増加となるが、利子収入が1.00兆円増加するため、家計全体への影響は0.08兆円(800億円)の増加となり「概ね中立」としている。
株式市場への影響はどうか。東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「デフレ脱却による経済の回復に伴って金利が上昇するのは自然な現象なので、大きな影響はないはず。中立だ」とみる。ただ、「債券市場の一部に、(財政懸念による)悪い金利上昇を喧伝する声があり、連想から不動産株などを売る動きはみられるかもしれない」という。みずほ証券の小林氏も「不動産・物品賃貸業、サービス業や装置産業で無視し難い影響が発生する見込み」と警戒する。
大きな焦点は、食品を中心に物価上昇の要因の一つになっている為替だ。高市政権が日銀利上げ容認に傾いた最大の理由は「円安に歯止めをかけるため」(内閣府関係者)とされる。利上げによって流れが円高方向に傾く可能性がある一方、東洋証券の大塚氏は「為替市場はあまのじゃくなので、逆に利上げで円安が進む可能性もある」と話す。財務省関係者からも「日銀が更なる追加利上げに踏み切るハードルが高いとの見立てから、円売りを仕掛けられるリスクはある」との声が聞かれる。
もし家計や経済にマイナスの影響が出た場合、マクロ経済政策運営の「最終的な責任は政府が持つ」と重ねて発言してきた高市氏が国民に向けてどう説明するかに注目が集まる。日銀が判断すればいい、という政権内の空気は批判を交わす思惑にも見える。
政権の政策協議に関与する前出の政府関係者は、「高市氏は利上げによる景気悪化で支持率が落ちることを相当警戒している」と指摘。「『責任は政府が負う』と言い切ってしまった以上、野党から『どう責任を取るのか』と追及されるのは目に見えている」と懸念する。
(鬼原民幸、竹本能文 取材協力:木原麗花 グラフィック作成:田中志保 編集:久保信博)
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