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結婚するまで「生理」の存在さえ知らなかった男たち──大物俳優、ナプキンを着ける

It’s a Bird! It’s a Plane! It’s Menstrual Man!

2018年10月02日(火)12時45分
アビゲイル・ジョーンズ

ムルガナンタム(クマール) は「人工子宮」を下着に装着 して自転車で動き回った COURTESY OF HOPE PRODUCTIONS

<安価で清潔な生理用品の製造機を発明してインドに「ナプキン革命」を起こした男をボリウッドのスターが熱演>

アクシャイ・クマールは世界で10番目に稼ぎが多いインド映画界の大スター。ピープル誌インド版で「存命中の最もセクシーな男」に選ばれたこともある。

「月経」という言葉を最初に聞いたのはいつか、「ボリウッドのトム・クルーズ」は思い出せなかった。ここはニューヨークのホテル。妻で女優兼ベストセラー作家のトゥインクル・カンナーと2人で取材に応じたクマールは、顔をやや赤らめながら答えを探す。「実はそのことについて、じっくり考えてみたことがないんだ」

カンナーはこのやりとりの前、「彼は月経というものが存在することを知らなかったと思う」と言っていた。

【参考記事】「切り抜いて生理用品として使ってください」――靴下や新聞紙をナプキン代わりにする少女がいるという現実

「ほとんどの男性がそうだと思う」

クマールが新作の主演映画『パッドマン』(インドで2月9日公開、日本では邦題『パッドマン 5億人の女性を救った男』として12月7日公開 )で演じるのは、アルナチャラム・ムルガナンタム。安価で清潔な生理用品を製造する機械を発明して、インドに「ナプキン革命」を起こした実在の社会起業家だ。そのムルガナンタムも、女性の月経について学んだのは結婚後だった。

「ほとんどの男性がそうだと思う」と、映画のプロデューサーを務めたカンナーは言う。「私はタイムズ・オブ・インディア紙のコラムを書くために調べものをしていて、ムルガナンタムの話に出合った。彼の名前を発音するのは大変だから、私はムルガと呼んでるけど」

原作はカンナーがムルガナンタムの人生を小説にまとめた『ラクシュミ・プラサドの伝説』。映画化の話が生まれたのは、「残念ながら、私たちの世界は本を読む人ではなく、映画を見る人が圧倒的に多い」ことに気付いたからだという。

100本以上のインド映画に主演したクマールは、90年代初めにアクションヒーローとして人気を集めたが、徐々に複雑な役もこなすようになる。17年には『ルストムの裁判』でインドのナショナル・フィルム・アワード最優秀男優賞を受賞した。

彼が社会派映画に出るのは初めてではない。17年夏の『トイレ』は、インドの悲惨な衛生状態を描いた映画だ。「この映画を撮影していたとき、インド人の54%はトイレのない生活をしていた。今では32%に減った」

それでもカンナーは『パッドマン』に夫を起用することには消極的だった。「妻は小さな作品を作りたいと言った。私は懇願したよ。『私にやらせてくれ』ってね」と、クマールは言う。

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