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野球の聖地・甲子園のカクテル光線を守れ! 最新技術での「伝統の再現」という挑戦

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2022年3月30日(水)11時00分
西田嘉孝

LED化された甲子園球場のカクテル光線(パナソニック エレクトリックワークス社提供)

<数々の熱戦や名シーンを、暖かみのある光で演出してきた甲子園球場の「カクテル光線」。LED化により各地で消えつつあるこの照明を守ったのは、「歴史と伝統の継承」という球場側の熱い思いと、それに応えるパナソニックの開発力だった>

大阪府門真市にあるパナソニック エレクトリックワークス社。同社の敷地内にある広場には、煌々と灯る照明の光を前に、真剣な表情でデータを取る技術者たちの姿があった。

人気の少なくなった社屋の片隅を、白色と橙色が混じり合った光が照らし出す──。春から夏、そして秋から冬へと季節が巡るなかでいつしかその光景は、残業を終えて帰路につく社員たちにとって珍しくないものとなっていた。

彼らが挑んでいたのは、阪神甲子園球場の伝統である「カクテル光線」のLEDによる再現。技術的な目処が立ち、甲子園球場を運営する阪神電気鉄道株式会社がスタジム照明のLED化を発表したのは、2021年7月5日のことだった。

日本の野球人気を支えてきたカクテル光線とは?

そして2022年の春、日本の野球の聖地ともいえる甲子園球場に、LEDを使った新たなカクテル光線がお目見えした。野球ファンには説明するまでもないが、カクテル光線とはプロ野球などスポーツのナイター照明で長く使われてきた、白と橙の混合色による照明の呼称だ。

戦後、国民的な人気を得たプロ野球を中心に広がったナイター照明では、オレンジかかった色味の白熱電球が使用されていた。しかしそれだけでは明るさが足りず、プレーに悪影響を及ぼすこともあったという。そこで甲子園球場は白熱電球の光に、より明るい水銀灯を加えることで、選手たちが安定してプレーできる環境を生み出した。

そんな画期的な照明が設置された甲子園球場で、初めてナイターが実施されたのは1956年5月12日の阪神対巨人戦。また高校野球では、同年の第38回全国高等学校野球選手権大会1回戦、延長戦となった伊那北と静岡の試合が初めてのナイターとなった。

その後、混合色の照明は各地の野球場やスポーツ施設などに普及。その発祥の地である甲子園球場は、より高い演色性(照明の自然な色味の再現性)を求め、1974年にメタルハライド灯(白色)と高圧ナトリウム灯(橙色)の混光源を導入した。

温かみのある光でスタジアムを包み込み、幻想的なステージのようにフィールドでプレーする選手たちを浮かび上がらせる。そんなスタジアム照明は、いつしかカクテル光線という名で野球ファンに定着し、甲子園球場では熱闘の代名詞ともなっていった。

たとえば山際淳司氏の短編「八月のカクテル光線」は、1979年の第61回選手権大会、延長18回におよぶ箕島対星稜の試合を描いた名作だ。山際氏は、いつ終わるともない筋書きのないドラマを演じる選手たちの心情に触れながら、「ドラマの内実を支えていたのは、あるいは光かもしれない。八月のカクテル光線。それが青春の光を導き出した」と書く。

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