ニュース速報

ビジネス

アングル:中国減速、ユーロ圏は周辺国よりも中核国が打撃大

2015年08月04日(火)12時16分

 8月3日、中国の景気減速や株価急落は世界中に余波を及ぼしそうだが、ユーロ圏内ではドイツやフランスなどの中核国よりも、イタリア、スペインなど周辺国の方が比較的打撃は小さいと見られる。上海で1月撮影(2015年 ロイター/Aly Song)

[ロンドン 3日 ロイター] - 中国の景気減速や株価急落は世界中に余波を及ぼしそうだが、ユーロ圏内ではドイツやフランスなどの中核国よりも、イタリア、スペインなど周辺国の方が比較的打撃は小さいと見られる。

これは周辺国の中国との結び付きが比較的小さいのに対し、中核国はずっと大きいためだ。中国からの強い需要はドイツの自動車産業に好況を、フランスの高級ブランドに成功をもたらし、オランダやフィンランドの化学産業や資本財セクターを着実な成長へと導いた。それに伴ってこれらの企業による設備投資も拡大した。

しかし中国からの需要は冷え込んでいる可能性がある。7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は低下し、株価は6月半ば以来で30%下落、成長率は間もなく2009年初頭以来で初めて7%を割り込む可能性が出ている。

RMGウェルス・マネジメント(ロンドン)のパートナー、スチュワート・リチャードソン氏は「ドイツには中国が欲する製品がある。しかし世界貿易と世界の経済成長が減速している上、ドイツは既にユーロ安による恩恵を一通り被った」と話す。

「中国が苦しめばドイツも苦しむ。従って欧州株の中では周辺国がドイツをアウトパフォームしている」とリチャードソン氏は続けた。

中国への関与度合いにおける中核国と周辺国との差は、貿易統計を見れば一目瞭然だ。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)のグローバル通貨ストラテジー責任者、マーク・チャンドラー氏によると、ドイツの輸出に占める中国向けは約8%、フランスとフィンランドはそれぞれ約5%。これに対し、イタリアは3%、スペインとアイルランドは2.5%程度で、ポルトガルはわずか2%だ。

UBSが作成したリストによると、中国と取引している欧州企業上位37社のうち、ユーロ圏企業は16社にとどまり、うち15社がドイツ、フランス、フィンランド、オランダの企業となっている。

<ドイツがくしゃみをすれば>

ドイツの自動車大手ダイムラーは第2・四半期、トラックや新発売した高級車モデルが好調だったため、中国の景気減速をものともせず営業利益を54%伸ばした。

しかし、ライバルのフォルクスワーゲンの高級車部門アウディは先週、高級車ブランドの最大市場である中国の需要減退を理由に、世界の売上高見通しを下方修正した。ダイムラーもいつまで逆風に逆らえるかは疑問だ。

とはいえ、ドイツが「くしゃみ」をすれば欧州全体が「風邪をひく」恐れはないのだろうか。

スパローズ・キャピタル(ロンドン)のパートナー兼最高投資責任者、ファハド・ラチディ氏は、スペインやアイルランドなど一部周辺国の景気が比較的好調なことについて、その他ユーロ圏諸国との対比で見た労働コストの低下を反映した部分が大きいだけだと一蹴。「中国が国際貿易に及ぼす影響ゆえにドイツの景気が悪化するようなら、周辺国も後を追うだろう。ユーロ圏内の貿易の大半はドイツ相手だからだ」と話した。

同氏は「中国の状況から、投資家はユーロ圏の中核国よりも周辺国を好むだろうと類推するのは牽強付会のたぐいだ」とみている。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

中国工業企業利益、1─4月は前年比20.6%減 需

ワールド

インド太平洋経済枠組み、供給網強化で合意 米主導で

ワールド

米債務上限引き上げ基本合意、31日に議会で採決へ

ワールド

アングル:米大学入試の「人種考慮」変わるか、最高裁

MAGAZINE

特集:愛犬の心理学

2023年5月30日号(5/23発売)

アメリカ最新研究が明らかにするイヌの潜在的知力と飼い主へのホンネ

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 2

    歩きやすさ重視? カンヌ映画祭出席の米人気女優、豪華ドレスからチラ見えした「場違い」な足元が話題に

  • 3

    韓国アシアナ機、飛行中に突然乗客がドアをこじ開けた!

  • 4

    F-16は、スペックで優るロシアのスホーイSu-35戦闘機…

  • 5

    ロシアはウクライナを武装解除するつもりで先進兵器…

  • 6

    「英語で毛布と言えないなら渡せない」 乗客差別と批…

  • 7

    ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみ…

  • 8

    【ヨルダン王室】ラーニア王妃「自慢の娘」がついに…

  • 9

    「ピンクのワンピース」に込めた、キャサリン妃の子…

  • 10

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほ…

  • 1

    「ぼったくり」「家族を連れていけない」わずか1年半で閉館のスター・ウォーズホテル、一体どれだけ高かったのか?

  • 2

    F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

  • 3

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 4

    築130年の住宅に引っ越したTikToker夫婦、3つの「隠…

  • 5

    歩きやすさ重視? カンヌ映画祭出席の米人気女優、…

  • 6

    ロシアはウクライナを武装解除するつもりで先進兵器…

  • 7

    韓国アシアナ機、飛行中に突然乗客がドアをこじ開けた…

  • 8

    おそろいコーデ、キャサリン妃の「頼れる姉」ソフィ…

  • 9

    ジャニー喜多川の性加害問題は日本人全員が「共犯者…

  • 10

    「英語で毛布と言えないなら渡せない」 乗客差別と批…

  • 1

    世界がくぎづけとなった、アン王女の麗人ぶり

  • 2

    「高い」「時代遅れ」 あれだけ騒がれた「メタバース」、早くもこんなに残念な状態に

  • 3

    カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

  • 4

    「ぼったくり」「家族を連れていけない」わずか1年半…

  • 5

    F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

  • 6

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎ…

  • 7

    築130年の住宅に引っ越したTikToker夫婦、3つの「隠…

  • 8

    日本発の「外来種」に世界が頭を抱えている

  • 9

    チャールズ国王戴冠式「招待客リスト」に掲載された…

  • 10

    「飼い主が許せない」「撮影せずに助けるべき...」巨…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中