コラム

アメリカから帰国した私が日本の大手航空会社の新型肺炎対策に絶句した訳

2020年02月25日(火)14時30分

非常口を挟んで筆者と向かい合っていたので、思わず「新型コロナウイルスは予防してなくていいのか」と聞いた。「ごもっともですが、マニュアルにないので放送できません。上からそう指示されています」彼女の返事を聞いて仰天した。

というのも、直前にアジア系女性の連れた子供が嘔吐し、トイレに駆け込んでいた。その後、乗務員が防護服を着込んでそのトイレを消毒していたのを乗客は目撃し、どよめいていたからだ。敏感な時期にもかかわらず、「上からの指示がない」一点張りの大手航空会社の危機認識の低さに言葉を失った。

大手航空会社だけではない。入国手続きを終え、預けた荷物が到着するのを待っている間、税関当局の注意喚起も機内放送とほぼ同じだった。ここでも筆者は意地を張って動植物検疫カウンターで新型コロナウイルスの感染に対し、なぜ注意の放送がないのかと確かめた。返ってきた答えは同じで上司からの指示がない、だった。

以上が、日本の水際対策の実状である。「上からの指示」がない限り、現場は機械的にマニュアルに従うだけだ。筆者の持参したマスクも日本でようやく役に立った。しかし、この大手航空会社や成田空港での新型コロナウイルス対策には正直、納得できないものがある。

<本誌2020年3月3日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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