コラム

武田の時代から現代までが混ざり合う甲府を歩く

2019年10月04日(金)15時00分
武田の時代から現代までが混ざり合う甲府を歩く

撮影:内村コースケ

第12回 甲斐善光寺(甲府市) → 昭和町風土伝承館・杉浦醫院
<平成が終わった2019年から東京オリンピックが開催される2020年にかけて、日本は変革期を迎える。令和の新時代を迎えた今、名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた>

map1.jpg

「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

map2.jpg

これまでの11回で歩いてきたルート:YAMAP「活動データ」より

◆信玄が川中島の戦いに際して開いた「甲斐善光寺」

7R402540.jpg

甲府を歩く今回の旅のスタート地点、甲斐善光寺

甲斐善光寺は武田信玄が開いた古刹である。善光寺といえば、長野市の善光寺(信州善光寺)が有名だが、日本最古の霊仏、一光三尊阿弥陀如来(善光寺仏)を祀るその信仰は、全国に広まっている。信州善光寺のHPによれば、北海道から九州まで全国に443の善光寺仏があり、「善光寺」を正式な寺名とする寺院は119カ寺あるという。

甲府の善光寺(甲斐善光寺)は、特に"本家"に近い善光寺である。起源は、武田信玄とライバル上杉謙信が激戦を繰り広げた「川中島の戦い」にさかのぼる。合戦の舞台となった川中島は、千曲川と犀川の合流点にある平原で、現在の長野市南部にあたる。近隣にある善光寺が戦火に巻き込まれるのを恐れた信玄が、本尊、仏具、そして僧侶ごと本拠地の甲府に移転させて建てたのが、甲斐善光寺である。

筆者は恥ずかしながら、前回の旅で参道の先にそびえる甲斐善光寺を目にするまで、こうした歴史を詳しく知らなかった。8年前に長野県の蓼科高原に移住し、以来、数え切れないほど車で甲府を通って東京との間を往復しているが、それだけではなかなか地元の常識すら見えてこないものだ。

山梨=甲斐国、その国府たる甲府といえば、なんといっても武田である。その中心市街地をゆっくり歩く絶好の機会となった今回は、日本史に疎い僕の目線で、律令国家の名残を基礎から学びながら歩いてみたい。

7R402567.jpg

甲斐善光寺は、信玄が長野の善光寺から本尊や僧侶ごと移転させて開いた

◆「山麓に墓地」は日本の町の典型?

地図を見ると、善光寺の北西にその名もズバリ「武田神社」がある。地元で最もメジャーな初詣スポットだとは知っていたが、なんとなく「甲府だから武田なのね」くらいにしか思っていなかったのが正直なところである。もちろん、地元民や戦国武将ファンの方々には常識なのだが、武田神社は武田氏の居館跡に建つ神社である。戦国時代の史跡であると同時に、現代の甲府の人々の信仰の場となっている、とてもユニークなスポットなのだ。

善光寺から武田神社へは中心市街地経由のルートが楽そうではあったが、あえて勾配のある山道を通って行くことにした。「愛宕山」(423m)を超える県道119号・愛宕山公園線を上り、県立少年自然の家を経て、小1時間ほどで下山。武田神社の後背地の住宅地に入る前に、大きな墓地(市営つつじが崎霊園)があったのが印象的であった。

この旅で気づいたことの一つは、市街地の外れの山麓に、必ずと言っていいほど墓地があることだ。東京の多摩地区のベッドタウンでも、陣馬山を下った最初の山村にも山との境に墓地があった。言ってみれば、低い所から順に「川(海)」「町」「墓地」「裏山」と連なるのが、日本の伝統的な市街地形成の典型なのではないだろうか。墓地を管理する日本の寺院の多くが「〇〇山」という「山号」を持っているように、山に寺が建てられる場合が多いのもその理由であろう。それ以前に、墓地を町外れに作るのは人間の自然な心理だと思う。山がちな地形と日本古来の自然信仰との関連も想起される。「山麓に墓地」が日本の町の典型の一つと考えるのは、あながち間違いではないと思う。

7R402653.jpg

甲府の市街地の北端にある山麓の墓地

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。

キーワード

ニュース速報

ワールド

英総選挙、与党保守党が過半数確保の見込み=出口調査

ビジネス

ドル/円約2週間ぶり高値、米中通商合意への期待で=

ビジネス

米株は最高値更新、米中通商協議で原則合意と報道

ワールド

米、地上発射型弾道ミサイル実験を実施=国防総省

MAGAZINE

特集:進撃のYahoo!

2019-12・17号(12/10発売)

メディアから記事を集めて配信する「巨人」プラットフォーマーとニュースの未来

人気ランキング

  • 1

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 2

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボイコット呼び掛ける

  • 3

    中国で焚書令、文化大革命の再来か

  • 4

    白人夫婦の中華料理店、「クリーン」を売りにしたら…

  • 5

    自己主張を守るという名の放任子育てが増殖中! 子…

  • 6

    トランプ、WTOの紛争処理機能を止める 委員たったの…

  • 7

    これがフィンランドの新内閣 34歳サンナ・マリーン首…

  • 8

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 9

    自殺した人の脳に共通する特徴とは

  • 10

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 3

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」組の絶望

  • 4

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボ…

  • 5

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 6

    ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を…

  • 7

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 8

    『鬼滅の刃』のイスラム教「音声使用」が完全アウト…

  • 9

    サムスン電子で初の労組結成──韓国経済全体に影響す…

  • 10

    次期首相候補、石破支持が安倍首相を抜いて躍進 日…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 3

    「日本の空軍力に追いつけない」アメリカとの亀裂で韓国から悲鳴が

  • 4

    元「KARA」のク・ハラ死去でリベンジポルノ疑惑の元…

  • 5

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 6

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」…

  • 7

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 8

    GSOMIA継続しても日韓早くも軋轢 韓国「日本謝罪」発…

  • 9

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 10

    日米から孤立する文在寅に中国が突き付ける「脅迫状」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
「STAR WARS」ポスタープレゼント
ニューズウィーク試写会ご招待
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!