最新記事
対中関税

中国の経済成長は持続不可能...衰退の中でも「台湾侵攻」は起こるのか?

In Decline but Still Dangerous

2025年5月1日(木)16時20分
練乙錚(リアン・イーゼン、香港出身の経済学者)
中国はトランプ関税に対抗姿勢を鮮明にしているが、無傷というわけではないようだ

中国はトランプ関税に対抗姿勢を鮮明にしているが、無傷というわけではないようだ zimmytws-shutterstock

<前途多難の中国経済にトランプ関税が追い打ちをかけている。苦境にある中国を率いる習近平の野心はいかほどか>

後世の歴史家は2015年を中国の長期に及ぶ衰退が本当の意味で顕在化した年として振り返ることになるだろう。波乱の10年代の半ばに、中国は多くの不利な展開に見舞われ、中国共産党指導部はそれに気付かなかったか、うまく対応できなかった。

21世紀の滑り出しは好調だった。01年、中国はWTOに加盟。GDPは急伸し、西側への輸出急増に支えられて07年の成長率は14%に達した。


アメリカがグレート・リセッション(大不況)に見舞われる頃には、中国は既に「世界の工場」と呼ばれ、世界金融危機にもほぼ無傷で他の国々の羨望の的だった。この「東昇西降」に中国の指導部も国民も浮かれていた。

だが、実態は順風満帆ではなかった。経済のメルトダウンを避けるため、中国はGDPの10%以上に相当する大規模な景気刺激策に走った。

おかげで経済は安定したが、テコ入れの規模と融資を多用した従来型の手法は、腐敗と相まって、過剰な生産能力や住宅在庫、不要インフラ、何より不良債権の山を生んだ。

その結果、15年の成長率は6.9%に鈍化、昨年は政府目標の5%を割り込んだ。来年には3%になるとスイスの金融大手UBSは予測している。一部の専門家は蔓延する統計不正を踏まえて、中国は23年までにマイナス成長に転じたと結論付けた。

いずれにせよ、2カ月連続の消費者価格デフレと29カ月に及ぶ生産者物価指数の下落に加え、アメリカが中国からの輸入品の大半に145%の関税を課した今、景気後退は避けられそうにない。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中