最新記事
トランプ関税

米製造業を衰退させ対米投資を妨げるトランプ関税...最後に笑う「あの国」とは

CAN THE FACTORIES BE BROUGHT BACK?

2025年4月28日(月)16時30分
グン・リー(ソウル大学特別名誉教授・経済学)
船に積まれて輸出先へ向かう現代自動車の製品(韓国・蔚山)

船に積まれて輸出先へ向かう現代自動車の製品(韓国・蔚山) SEONGJOON CHOーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<東アジアで関税が製造業の基盤作りに役立った事例はあるが、そもそもの前提がアメリカと異なっていることにトランプは気づいていないようだ>

トランプ米大統領が「相互関税」を発表したことを機に、アメリカでは関税が自国にもたらし得る深刻な悪影響が議論されている。1930年のスムート・ホーリー法の失敗など過去の経験も引き合いに出される。

一方で東アジアには、製造業の強固な基盤を築くために関税をうまく利用してきた歴史がある。しかし東アジア(特に韓国)で成功したやり方と、トランプ政権が取ろうとしている手法には重要な違いがある。


まず、韓国の関税は「非対称的」なものだった。輸出産業として促進しようとした家電製品などの消費財には高関税を課したが、製造業に必要な機械などの資本財には低い関税を適用した。この非対称の関税と低賃金の組み合わせがなければ、韓国は低コストの製造拠点という地位を確立できなかったかもしれない。

それに対して、アメリカは既に労働コストが高い。そこに幅広い品目を対象とした高関税が加われば、事業を行う上でコストが極めて高くつく国になる。事実、一部の韓国企業はコスト高に耐えかねて、アメリカに新工場を設立する計画を断念したと報じられている。

トランプ関税は国内の製造業に対外直接投資(FDI)を呼び込むどころか、その妨げになっているのだ。米政権は国別の関税率を算出する際、FDIを考慮する必要がある。貿易赤字から対象国のFDIを引けば、FDIが多いほど関税は低くなる。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国のウィーライド、新規上場で公募価格決定

ビジネス

伊フェラーリ、第3四半期コア利益が予想上回る 高価

ワールド

中国首相、貿易制限を批判 上海で国際輸入博覧会が開

ワールド

ノルウェー議会、政府系ファンドの投資倫理指針見直し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中