最新記事
日韓関係

韓国の松を育てた日本人がいた 日韓友好の礎となった林業技師・浅川巧とは

2025年4月16日(水)16時08分
佐々木和義
浅川巧の碑

忘憂里共同墓地に掲げられた浅川巧の碑 대동묘지도 / YouTube

<日韓修交60周年となった今年、朝鮮文化を愛し民芸価値を見出した両国交流の先駆者の追慕式が行われた>

2025年4月2日、ソウル中浪区の忘憂里(マンウリ)歴史文化公園で「日韓合同浅川巧94周忌追慕式」が開催された。この式典は日韓修交60周年を記念するもので、日韓両国から40人余りが参加した。

朝鮮の山を守り、民芸品の美しさを広める

浅川巧は1891年、山梨県北巨摩郡甲村(現北杜市)で生まれた林業技師で、秋田県大館営林所勤務を経て1914年に兄・浅川伯教を追って朝鮮に渡り、総督府農商工部山林課に就職、林業試験場に配属された。当時、朝鮮半島の山々は荒廃が進んでおり、現地の風土に合う養苗法の開発と植林が巧の仕事だった。当時、朝鮮の松の養苗には2年以上が必要だったが、巧はこれを1年へと短縮することに成功するなど、画期的な養苗法を編み出した。このおかげもあって韓国の人工林の37%が巧の手によると言われている。

養苗のために必要な種子を採取するため、朝鮮各地を回った巧は、自然と朝鮮の人びとと彼らの生活用具に接することとなり、注目されることもなく粗末に扱われていた朝鮮の陶磁器や家具、民芸などを収集した。これらを美術教師だった兄・伯教と共に研究を進めて、24年、美術評論家で思想家だった柳宗悦の協力を得て景福宮内に朝鮮民族美術館を設立。29年『朝鮮の膳』、31年『朝鮮陶磁器考』と相次いで書籍も刊行して、朝鮮半島の民芸品の美しさを広める活動を続けた。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結果引き

ビジネス

消費者態度指数、5カ月連続マイナス 基調判断「弱含

ワールド

中国、欧州議会議員への制裁解除を決定

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中