最新記事
ロシア経済

苦境のロシア経済、トランプ大統領の早期終戦案は「渡りに船」

2025年2月25日(火)19時42分
赤の広場

2月24日、ロシア経済はウクライナ戦争の膨大な軍事支出で過熱状態だが、深刻な冷え込みに転じる瀬戸際にある。モスクワの赤の広場で23日撮影(2025年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシア経済はウクライナ戦争の膨大な軍事支出で過熱状態だが、深刻な冷え込みに転じる瀬戸際にある。大規模な景気刺激策や金利の急上昇、インフレの高止まり、そして西側諸国による経済制裁の影響が浸透しつつあるからだ。それだけに、戦争の早期終結を目指すトランプ米大統領の方針はロシアにとって助け船になりそうだ。

トランプ政権は、対ロシア交渉でウクライナや欧州の同盟国を除外し、侵攻の責任をウクライナに負わせるなど政治的にロシア寄りの姿勢を取っている。


 

米国のこうした動きについて元ロシア中央銀行副総裁のオレグ・ビューギン氏は、ロシアが2つの望ましくない選択肢に直面する中で起きていると分析。ロシアはウクライナ戦向けの軍事支出の拡大を中止するか、あるいは支出を拡大し続けてその代償として何年にもわたる低成長、高インフレ、生活水準の悪化を甘受するか、二者択一を迫られているが、いずれの道も政治的リスクを伴うと指摘した。

財政支出は通常、経済成長を促進する。しかしロシアでは民間部門を犠牲にする形でミサイル向け支出という、新しい価値創出につながらない軍事支出で経済が過熱し、中央銀行の政策金利は21%にまで達して企業の設備投資が鈍り、インフレは抑制できていない。

ビューギン氏は「ロシアは経済的な観点から外交的手段による戦争終結に向けた交渉に関心を持っている。そうすれば限られた資源を非生産的な目的に再配分し続けるのを回避できるからで、これこそスタグフレーションを避ける唯一の方法だ」と話した。

ロシアが国家予算の3分の1を占める軍事費をただちに減らすことはないだろう。しかし和平合意の可能性が浮上すれば経済への圧迫が弱まり、制裁の解除や、最終的には西側企業の復帰につながることもあり得る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続落、中東情勢緊迫で一時600円超安 円

ビジネス

午後3時のドルは143円半ば、リスク回避でドルと円

ワールド

印機墜落、地上の学生寮で24人死亡か ブラックボッ

ワールド

イスラエルがイランに先制攻撃、核施設など100カ所
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中