最新記事
ジェンダー格差

「子どもは欲しいがワンオペはきつい」......非婚就業に傾く日本女性の理想と現実

2024年2月7日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
ワーキングマザー

日本の女性も仕事と子育てを両立したいという理想を持っているが VGstockstudio/Shutterstock

<通常は年齢が上がるにつれて収入は多くなるが、日本の既婚女性は20代後半をピークに減少している>

就職情報事業のマイナビが昨年11~12月に実施した調査によると、今年春に卒業予定の大学生・大学院生の19.2%が「今のところ、子は欲しくない」と答えたという。性別をみると男子が12.1%、女子では23.5%にもなる。安定した収入を得る見通しを持ちにくいことに加え、女子については結婚・出産による損失を意識しているためと思われる。

 
 

だが裏返すと、女子でも76.5%(4人に3人)は出産を望んでいる、ということだ。国の調査結果を見ても、18~34歳の未婚女性で「非婚就業継続」を望んでいるのは12.2%、「DINKs」(共働きで子を持たない)希望は7.7%でしかない(『出生動向基本調査』2021年)。残りの8割は出産を望んでいることになる。この女性たちが出産に踏み切れたら、出生数は大幅に増える。

しかしこれはあくまで理想で、現実はこうなるだろうという予想はだいぶ違っている。<表1>は、未婚女性のライフコースの理想と予想(現実展望)を対比したものだ。

data240207-chart01.png

理想としては、仕事と子育てを両立したいという「両立コース」が34.0%と最も多くなっている。対して予想を見ると、「非婚就業」が33.3%と最も多い。こうしたズレがなぜ生じるかだが、理想の結婚相手に出会える展望が持てない、というのが大きいのではないか。

女性が男性に求める条件は、経済力ばかりではない。上記の『出生動向基本調査』(2021年)によると、未婚女性が結婚相手に求める条件として最も多いのは「人柄」で88.2%、その次は「家事・育児の能力や姿勢」だ(70.2%)。経済力(36.3%)や職業(24.2%)などよりも、「重視する」のパーセンテージはずっと高い。

女性が理想として描いている「両立コース」とは、仕事に加えてへとへとになって家事や育児を一手に担うようなものではない。パートナーの協力を強く期待している。しかし日本の男性の家事・育児分担率は非常に低いので、そうなる可能性が高い。それならば、現実には非婚のまま就業継続という方向に傾きやすくなる。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中