最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナ軍トップのザルジニーが「解任」へ、大統領に不信感を抱く「民兵組織」と接触も

2024年2月5日(月)14時00分
ジャック・デッチ、エイミー・マッキノン、ロビー・グラマー(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)
ウクライナ軍トップ解任の背景と戦争の行方

ザルジニーは新世代の指揮官だが、大統領との関係は悪かった ALEXEY FURMAN/GETTY IMAGES

<正式な発表はまだないが、ウクライナ軍トップのワレリー・ザルジニー総司令官の解任は確実なようだ。反攻作戦の失敗や軍事支援の滞りの一方で、実は明るい材料も>

ロシア侵攻の前から、ザルジニーと政治指導者との間には意見の相違があった。

ザルジニーは来るべき戦いの準備を進めようとしたが、ゼレンスキー大統領を含む政治指導者たちはロシアによる全面的侵攻の脅威を軽視していた。

ザルジニーは2022年、東部の領土を一時的に明け渡すことで時間を稼ぐことに成功した。

だがウクライナ軍は23年、その東部のバフムートで泥沼にはまり、反転攻勢の要である南部に兵力と資源を十分に振り向けられなかった。

ワシントン・ポスト紙によると、ザルジニーは兵力と武器を追加投入しなければ、ロシアに占領された地域をこれ以上取り戻すことはできないと抗議し、ゼレンスキーとの関係をさらに緊張させた。

「敵が人的資源の動員で相当有利な立場を享受していることを認めなければならない。一方、ウクライナ国家機関は(追加動員などの)不人気な手段を使わずに兵力レベルを引き上げることができない」

と、ザルジニーは2月1日のCNNへの寄稿で述べている。

戦術だけでなく、個人的な対立もある。

首都キーウ(キエフ)を訪れた複数の専門家によると、2人の間の緊張関係は容易に感じ取れる。

ザルジニーの名前がメディアで何度も取り上げられ、22年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれてからは特にそうだ。

「本人は目立たないようにしているが、政治的才能もある」

と、研究者のコンスタンティン・スコルキンは昨年12月、カーネギー国際平和財団への寄稿で指摘した。

「ゼレンスキーに不信感を抱く民兵組織やナショナリストとも接触を保っている」

ザルジニーは11月のエコノミスト誌とのインタビューで戦争が膠着状態にあると公に認め、関係はさらに悪化した。

21年にザルジニーを軍トップに抜擢したゼレンスキーの決定は、ウクライナにとって旧ソ連時代との決別と受け止められた。

ザルジニーは冷戦後に軍人となった新世代の1人。ソ連赤軍の所属経験がない独立後初の軍トップでもある。

後任候補の1人とされるオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官は、旧ソ連の陸軍士官学校出身でザルジニーより8歳上。

ワシントン・ポストによれば、戦術的重要性の低いバフムートの死守にこだわる作戦に関与し、一部の兵卒や下士官から嫌われている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カタール、ガス生産国に貿易障壁反対を呼びかけ

ビジネス

中国系電池メーカー、米工場の建設断念 ミシガン州が

ワールド

「経済あっての財政」が基本、戦略的に財政出動 高市

ワールド

英財務相、所得税引き上げ検討 財政赤字削減で=ガー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中