最新記事
日台関係

民進党と安倍派弱体化で日台の蜜月に暗雲...? 新政権下で目指していくべき方向とは?

THE HONEYMOON FADES

2024年1月15日(月)13時30分
野嶋 剛(ジャーナリスト、大東文化大学教授)
ILLUSTRATION BY ESFERA/SHUTTERSTOCK

ILLUSTRATION BY ESFERA/SHUTTERSTOCK

<両国の政治的要因が日台関係を危うくするなか情勢に流されない強固な民意が頼りに>

今回の選挙を挟んで、日台関係は2つの理由でピンチに陥る可能性がある。

1つは台湾政治での民進党の影響力低下である。今回、同党は総統ポストは辛うじて維持できたとしても、同時に選挙が行われる立法院(国会)では大幅に議席を減らす見込みだ。同党は基本的に日米との友好を基軸としている。中国との対話が断絶状態にあるなか、東アジアで孤立感を生まないよう特に日本との関係には気を使ってきた。

蔡英文(ツァイ・インウェン)総統はX(旧ツイッター)を積極的に運用し、約240万のフォロワーを抱える。1月1日の能登半島地震でもXを通していち早く日本へのお見舞いと緊急支援の意向、義援金の送付を伝える日本語の発信を連投し、その都度、10万を超える「いいね」が付く。

一方の国民党、台湾民衆党も日本を重視しないわけではないが、対米・対中バランス外交を唱える方針の中で、日本に対する力点の置き方は弱い。それに加えて現状、両党には日台関係に通じた政治家がほとんどいない。

もう1つは、日本政治における安倍派の衰退である。「台湾有事は日本有事」発言に象徴されるように、安倍晋三元首相には台湾への強い思い入れがあり、その権力強化とともに成長した安倍派=清和会には親台湾派の伝統があった。コロナ禍での台湾へのワクチン支援、台湾の半導体大手TSMCの日本進出など、日台間の大きな出来事の背後には常に安倍派人脈の後押しがあった。

だが、安倍元首相の死去、派閥の主導権争いの混乱、そして政治資金不正問題で、安倍派の影響力低下は著しい。今後の政界での発言力が維持できるか微妙な情勢になっている。

対日重視の民進党政権下であっても、台湾は福島第一原発がある福島県と近接県からの食品輸入には消極的だったし、逆に台湾が熱望する「包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)」への加盟も、日本が必死に動いたわけではない。それでも総じていえば、日台間には温かいムードとそれを支える「政治」の後ろ盾があったことは確かだろう。

「相思相愛」の民意が支える

民進党と安倍派の弱体化による影響は避けられないが、日台関係が1972年の断交後のように一気に希薄になるかといえば、そうとは限らない。日本と台湾には良好な相互感情に基づく民意の支えがあるからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ワールド

25年度補正予算が成立=参院本会議

ビジネス

EU、35年以降もエンジン車販売を容認する制度検討

ビジネス

日経平均は続落、5万円割れ AI関連株の下げが重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中