最新記事
ウクライナ情勢

反攻4カ月目は防衛線突破を阻止したロシアに軍配、ウクライナは装備を失い過ぎた──RUSI

Rushing Ukraine's Counteroffensive Brings 'Unsustainable' Losses: Report

2023年9月5日(火)16時36分
ブレンダン・コール

NATOの教官たちがここでの戦いを知らないのも敗因の一つ(5月23日 東部バフムトの前線の塹壕で戦うウクライナ兵) REUTERS/Yevhenii Zavhorodnii

<装備に大きな損失を被ったのは両軍とも同じだが、ロシア軍は反攻初期に徹底的に攻撃を加えてウクライナ軍の機動力を奪った>

【動画】「オペレーターの高い技術」を証明...対戦車ミサイルがロシア兵に直撃する瞬間

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の最新報告によれば、ウクライナ軍は装備に大きな損失を被っている上、欧米諸国が提供する訓練は彼らの戦闘に適していない。RUSIは、9月4日に発表した報告書で、「反転攻勢を急いだあまりの装備損失は、持続不可能なレベルに達している」と述べた。

この報告書は、ウクライナがロシア占領地の奪還を目指す反攻の4ヵ月目に突入する今、ウクライナが直面する課題に焦点を当てている。報告書によれば、ウクライナ軍が前進すればするほど、領土解放にはさらなる攻勢が必要になる。戦争が冬から来年へと長引くなかで、ロシアの侵略に対抗しウクライナを支援し続ける西側諸国のコミットメントが必要だという。

RUSIの分析は、東部ドネツク州と南部ザポリージャ州の境界に位置するノヴォダリウカ

村とリヴノピル村での2週間にわたる戦術行動に基づいている。報告書によれば、ウクライナ軍の装備の損失率は甚大で、「外国から供与された装甲戦闘車両がなければ、人的損失ももっと大きなものになっていただろう」と述べる。

報告書は、「ウクライナ軍は、装甲車両隊を常に回収、修理、維持し続けることが重要だ」と続ける。

ロシア軍は防衛線突破を阻止

だが「このやり方での進軍には時間がかかる」。ウクライナ軍が5日ごとに約640~1000キロ前進する間、ロシア軍は態勢を整えてしまう。

ロシアの軍隊も火力や戦車の損失率は高いが、彼らはウクライナの反攻初期に十分に相手の装備に損失を与え、ウクライナの機動力を低下させることに成功した、とRUSIはみる。要するに、ロシアはウクライナ軍の防衛線突破を阻止する戦術的成功を収めた、ということだ。

ロシア軍は装備に大きな損失を被りながらも、地雷原を拡大し、電子戦(EW)の守備範囲を広げ、火力の指向をより精密にするなどの適応をした。

ウクライナ軍にとっても、「遠隔地雷探知ツールの開発は非常に有益だった」。

しかしウクライナ軍の反攻は大隊と旅団レベルの人材不足に制約されており、スタッフの訓練が「大きな助けになる」という。ただしこれはウクライナの組織に合ったものでなければならず、「NATOの方法を教えるのでは役に立たない」と指摘する。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ステフィン・カリー、嘘みたいなロングシュート成功…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中