最新記事

米台協力

米台の沿岸警備隊が「初の合同軍事演習」──台湾紙報道

U.S. and Taiwan Coast Guards to Hold First Joint Drills At Sea: Report

2021年8月12日(木)15時49分
ジョン・フェン
台湾の大型巡視船「嘉義」

大型巡視船「嘉義」が太平洋に向かったことが確認されている(3月29日、高雄市の式典で台湾海巡署に引き渡された嘉義) Yimou Lee-REUTERS

<台湾当局は軍事演習参加を否定したが、「将来的な協力の可能性は排除しない」とも>

台湾は8月10日、台湾が米沿岸警備隊の演習に参加した事実はないと否定、しかし今後の協力の可能性は「排除しない」と述べた。今月に入って、船舶位置の追跡データから、台湾艦船が複数で太平洋に向かったことが示され、アメリカとの合同軍事演習の「予行演習」ではないかと報じられていた。

一方、台湾における米政府の窓口機関である米国在台協会は11日、米台の沿岸警備作業部会の初会合が行われたことを確認した。この作業部会は3月に、米台が海洋での連携強化のために設置することで合意していたものだ。台湾の外交部(外務省)によれば、会合はオンラインで実施され、今後も定期的に行われる予定だ。

会合に先立ち台湾紙の自由時報が、米台初の海上での合同軍事演習が「近い将来」予定されていると報じたが、これについてはアメリカも台湾もコメントしていない。米インド太平洋軍の主導で8月27日まで実施されている「大規模広域訓練2021」に台湾が関与しているかどうかも明らかになっていない。

自由時報は10日、台湾の大型巡視船「嘉義」が「安平」など複数の巡視船を伴って、東部にある花蓮港の沿岸から28海里の地点で演習を行ったと報じた。船舶位置情報サイトの「マリントラフィック」によれば、「嘉義」は11日早朝にも同じ地点に向かっている。

中国による嫌がらせに対抗

この報道を受けて、台湾の艦船がアメリカと合同演習を行ったのではないかという憶測が浮上したが、台湾の海巡署(海上警察)は、アメリカの艦船の参加はなかったと否定した。

海巡署はウェブサイトに掲載した声明の中で、米台の沿岸警備作業部会が扱うのは、捜索・救助活動や違法操業・無報告・無規制の漁業の取り締まりなどの分野での協力だと説明。「将来、なんらかの形で(アメリカと)交流・協力する可能性は排除しない」と述べたが、沿岸警備に関する合意の内容については、双方の合意なしに開示されることはないとした。

自由時報は、海巡署の関係者の発言を引用する形で、10日に4000トン級巡視船「嘉義」の主導で実施された演習は、今後予定されている米沿岸警備隊との合同演習に向けた「予行演習」だったと報じた。

沿岸警備に関する米台間の合意は、災害時の救助活動や環境保護の分野での相互協力を強化する内容だ。有識者たちは、この合意は中国が軍の代わりに沿岸警備隊や海上民兵を使って行う、いわゆる「グレーゾーン」戦術(嫌がらせ行為)に対抗する上で有効だと指摘する。

中国は米台の協力を嫌っており、米台沿岸警備作業部会が設立された3月26日には、中国軍の戦闘機や核爆撃機など20機が、台湾の防空識別圏に侵入した。米台間の合意に対する反発を示したものとみられる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中