最新記事

自治区

警察を占拠したデモ隊の「自治区」に流れる不穏な空気

Seattle Protesters Set Up Barricades, Prepare to Defend CHOP From Police

2020年6月24日(水)18時15分
ハレダ・ラーマン

排除にやってくる警官に対抗するためにバリケードを築く「自治区」のデモ参加者 Lindsey Wasson‐REUTERS

<デモ隊が「自治区」を宣言したシアトルでは、自治区内で2度も銃撃事件が発生し、市長は警官隊を突入させることも辞さない構えを見せている>

アフリカ系アメリカ人ジョージ・フロイドを白人の警察官が死亡させた事件以来、全米に人種差別への抗議活動が広がっているが、その一環として、ワシントン州シアトルでは、デモ隊が警察署の周辺を封鎖、警察官の立ち入れない「自治区」の設立を宣言した。

シアトルのジェニー・ダーカン市長は、この周辺で2度にわたる銃撃事件が起きたことから、自治区の解体を宣言。一方、デモ参加者は自治区を警察から守る準備を進めている。

デモ隊がシアトル市東部を管轄する警察署周辺の数ブロックを占拠したのは、6月8日のことだった。その日、警察は平和的に行われていた人種差別に抗議するデモの参加者に、催涙ガスや唐辛子スプレー、閃光弾を発射していた。

デモ隊は警察署の周囲をバリケードでふさぎ、警察官を締め出した。そして、その一角を「キャピトルヒル自治区(CHAZ)」と宣言した。

ダーカン市長は22日の記者会見で、市はデモ隊による地区の占拠を終わらせるために、地域住民との交渉を開始していると語った。

また「自治区」にまもなく警官が戻ると言い、デモ隊が自発的に去らないのであれば、「追加の措置」が講じられる、と述べた。

警察には徹底抗戦の構え

だがこの発表のすぐあとに、ソーシャルメディアに投稿された動画や画像を見ると、デモ隊は自発的に自治区を明け渡すつもりはなさそうだ。

あるツイッター・ユーザーが投稿した写真には、警察署の東館の周囲に設置されたバリケードが写っていた。「警官が来ても備えは万全」とユーザーは書いている。

警察署の外壁には、「要求が聞き入れられるまで、われわれは立ち去らない」と、書かれた紙が貼られている。バナーで示された要求は3つ――シアトル警察の予算を50%削減すること、黒人コミュニティに資金を提供すること、逮捕されたデモ参加者を全員解放すること、だ。

22日夕方にジャーナリストのジェイク・ゴールドスタインストリートが投稿した数本の動画には、警察官がデモ隊の排除にやってきたときのための備えするデモ隊の様子が映っていた。

東側の建物から警察が入ってくるのを阻止するために、フェンスとバリケードを移動するデモ参加者たちの姿もあった。

警察署の周囲で人間の鎖を作る練習しているデモ参加者の動画もある。

別のユーザーが投稿した動画では、デモ参加者がシアトルの運輸局が自治区の周囲に置いたコンクリートのバリケードを動かしていた。

<参考記事>自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ
<参考記事>米シアトルで抗議デモ隊が「自治区」設立を宣言──軍の治安出動はあるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JPモルガン、12月の米利下げ予想を撤回 堅調な雇

ビジネス

午後3時のドルは157円前半、経済対策決定も円安小

ビジネス

トレンド追随型ヘッジファンド、今後1週間で株400

ビジネス

政府、経済対策を閣議決定 高市首相「財政の持続可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中