最新記事

韓国

来春の総選挙を前に「タマネギ法相」で深まる韓国の分断

2019年9月25日(水)11時14分
テジョン・カン

「最側近」曺国の法相就任で文政権は新たな課題を抱えることに LEE JAE-WONーPOOL/AFLO

<曺の法相任命を支持するかどうか多くの国民が態度を決めかねている>

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9月9日、疑惑とスキャンダルの渦中にある曺国(チョ・グク)を法務部長官(法相)に任命した。

曺は文の側近中の側近で、大統領府民情首席秘書官を務めてきた。しかし1カ月前に法相候補に指名されて以来、本人と家族が私利私欲のために不公正な振る舞いを重ねてきたとして集中砲火を浴びている。

特に国民の怒りを買ったのが、娘が名門大学や大学院に不正入学した疑惑だ。さらには私募ファンドの不透明な投資、偽装離婚、文書偽造、年齢詐称、証拠隠滅などの問題が次々に暴露されている。その多くはまだ疑惑の段階だが、検察はいくつかの事案で調査を始めている。曺の妻が在宅起訴され、娘が事情聴取されるなど、捜査が続く見込みだ。

一連の騒動を受けて、曺には法相の職務を遂行する資格がないと考える国民は怒りを募らせている。文が任命を強行した後、韓国のポータルサイト最大手のネイバーには、曺の辞任を要求する声があふれ返った。

とはいえ、全ての国民が反対しているわけではない。曺を支持し、文の判断を尊重するという人もたくさんいる。結局のところ、疑惑のうち現段階で事実であると証明されたものは、ごく一部にすぎない。国民の間で曺への見方が分かれているのと同じように、政界も法相任命の是非をめぐり対立している。

与党「共に民主党」は曺を辞任させまいと必死だが、最大野党の自由韓国党は曺と文政権への攻撃を強めている。その主な理由は、来年4月に予定されている総選挙だ。総選挙は、文政権の任期後半の命運を占う戦いになる。

さらに、その先には2022年の大統領選と地方選が待ち受ける。注目すべきなのは、曺の法相任命を支持するかどうか、多くの国民が態度を決めかねているとみられることだ。その賛否は政権の支持率に直結する。

国民感情と与野党の思惑

実際、世論調査の結果はここ数週間で大きく変動している。8月上旬に文が曺を法相候補に指名したとき、調査会社韓国リサーチが行った世論調査では賛成が42%、反対が36%だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国大統領代行、米との協力を各省庁に指示 「敏感国

ワールド

ロシア国防省、ウクライナ南部で前進と表明 ザポロジ

ワールド

トランプ氏「フーシ派による攻撃はイランの責任」、深

ワールド

外国企業トップ、習主席と会談へ 年次フォーラムで訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料高騰問題」の深層
  • 2
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「二酸化炭素(CO₂)排出量」が多い国は?
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 6
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 7
    鈍器で殺され、バラバラに解体され、一部を食べられ…
  • 8
    「トランプ錯乱症候群」(TDS)って何? 精神疾患に…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 8
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 9
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 10
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中