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韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断国家の世論割れる

2019年8月10日(土)21時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

「映画の奇跡」を邪魔するな

筆者自身は政治の専門家ではないので、現在の日韓関係についてどちらが悪いなどあれこれ論じるつもりもない。しかし、「映画」に携わっている者のひとりとしてエンターテインメントや芸術についてだけはひとこと言わせてもらいたい。映画バイヤーとして様々な国の映画を国境を越えて配給してきた筆者は、今まで何度も映画に国境はないという奇跡を目にしてきた。自分が輸入した日本映画の試写会で感動したと涙目になりながらわざわざお礼を言いに来た韓国人女性観客。韓国映画にハマり、輸入前の字幕のついていない韓国映画まで全部見たいがために必死で語学勉強した結果ペラペラになった日本人。プサン映画祭で、なんとか日本人監督にその監督の作品が素晴らしかった一言伝えたいがためにホテル前で何時間も待っていた映画学校に通う韓国人学生......。

筆者自身、映画の世界で生きていくと決めたのは、『JFK』というハリウッド映画を小学生のときに観たことがきっかけだった。もしも何らかの理由で規制がかかるなどしてこの映画が日本で公開されなかったら、その後の人生は大きく変わっていただろう。そういう意味では自分自身、映画に国境はないという奇跡の証人である。

だから常に自分が輸入した映画はどんな作品であれ、「もしかしたら観客のその後の人生を変えてしまうかもしれない」という気持ちで大切に公開していた。だからこそ、政治的対立から特定の国の映画がこのように排除されるという事態については決して黙ってはいられない。

もちろん、観客が自身の好みと違うとか、主義主張と相容れないということで日本映画や韓国映画を観に行かないのは個人の自由である。しかし、文化やアートに政治が介入するとか、逆に政治的な対立に忖度して創り手が作品を見てもらえない、観客が観ることをはばかれる、といった事態は、絶対に許されない。あってはならないことなのである。

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