最新記事

ブレグジット

EU、英ジョンソン首相の離脱再交渉要求を拒絶「現実的な代替策ない」

2019年8月21日(水)08時39分

欧州連合のトゥスク大統領は20日、アイルランド国境問題の解決策 「バックストップ(安全策)」削除に関するジョンソン英首相の要求を批判した。7月撮影(2019年 ロイター/FRANCOIS LENOIR)

欧州連合(EU)は20日、ジョンソン英首相が求めるEU離脱協定案の再交渉に応じない姿勢を鮮明にした。協定案の争点とされるアイルランド国境問題の解決策 「バックストップ(安全策)」を巡り、英国が「現実的な代替策」を提示していないと批判した。

ジョンソン首相は前日、トゥスク大統領に書簡を送り、バックストップをEU離脱協定案から削除するようあらためて要求し、その代わりに離脱後の移行期間中に代替策を導入するとの合意を盛り込むことを提案した。

トゥスクEU大統領はツイッターへの投稿で「バックストップは代替策が見つかるまで、ハードボーダー(物理的な国境)の復活を回避するための保険」と言明。「バックストップに反対しつつも、現実的な代替策を提案していない人々は、たとえ認めていなくても、国境の復活を実際に支持している」と批判をあらわにした。

メルケル独首相は、EUには「実務的な解決策」を検討する用意があるとしつつも、メイ前英首相と合意した離脱協定案を変更する必要はないと言明した。

さらに、ロイターが確認した欧州委員会の文書からは、EU加盟27カ国が、ジョンソン英首相が目指すバックストップ削除に遺憾を表明し、反対する構えで一致していることが明らかになった。

同文書は、「アイルランド島におけるハードボーダー復活を回避するため、バックストップは離脱協定案において必要かつ、法的に運営可能な解決策」と言明。「英新政権がこうした法的に運営可能な解決策ではなく、期日までに代替策を模索するコミットメントを望んでいることを残念に感じる。また、代替策はまだ見つかっていない」とした。

こうしたEU側の反応を受け、ジョンソン首相は記者団に対し、EUが離脱を巡る再合意に「幾分否定的」としつつも、自身は実現可能と確信していると述べた。

「合意なき」離脱の可能性に敏感な英ポンドは下落。とりわけトゥスクEU大統領のツイートが圧迫材料となり、対ユーロとドルで約3年ぶりの安値に沈んだ。その後、メルケル独首相の発言を受け、下げ幅を幾分縮小した。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中