最新記事

動物

2年越しの調査で絶滅危惧種ジャワヒョウ10頭確認 インドネシア、保護政策が課題に

2019年5月6日(月)19時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2017年には4頭の生息が確認されたジャワヒョウ

インドネシア森林環境省は2017年2月に西ジャワ州スカブミ南方のチケプ野生動物保護区で今回と同様、ジャングル内の隠しカメラによる調査で4頭のジャワヒョウの生息を確認したと発表したことがある。

当時のAFPの報道によると、寄せられた足跡と糞の情報に基づいて2016年7月から8月にかけての28日間、隠しカメラで撮影したところ、「黄色に黒い斑点模様のジャワヒョウ3頭」と「真っ黒なジャワヒョウ1頭」を確認したという。

また周辺などで発見した足跡や木に残された爪痕などの詳細な分析調査から、さらに別に8頭のジャワヒョウが同保護区に生息している可能性が高いことも分かったという。

同地区は不法伐採などでジャワヒョウ絶滅も予想されていただっただけに、この個体生息確認は朗報となった。CIインドネシアなどの分析ではジャワヒョウの野生種の生息数はジャワ島全体で約500頭とみられ、その大半はジャワ島西部の森林地帯にいる可能性が高いという。

このようにジャワ島では固有の野生動物が絶滅の危機に瀕していたり、あるいはすでに絶滅している例が多くある。

「動物より人が優先」で、動物保護や自然環境保全などが後回しあるいは忘れられることも多いインドネシアだが、「一度絶滅した動物は二度と戻らない」ことを肝に銘じて、自然・環境問題についての対策を少しでも政治主導で上げる努力をジョコ・ウィドド大統領に期待したい。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、6000件減の21.6万件 7

ワールド

中国、日本渡航に再警告 「侮辱や暴行で複数の負傷報

ワールド

米ロ高官のウ和平案協議の内容漏えいか、ロシア「交渉

ワールド

サルコジ元大統領の有罪確定、仏最高裁 選挙資金違法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 5
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「世界の砂浜の半分」が今世紀末までに消える...ビー…
  • 10
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 6
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中