最新記事

オリンピック

激怒する韓国選手も 北朝鮮と平昌五輪統一チーム結成に韓国世論は猛反発

2018年1月18日(木)09時07分


国内分裂

こうした国民の反発は、韓国からの一方的な支援となりがちな北朝鮮に対する外交が、いかに国内を分断させ論争の火種であり続けているかを示している。朝鮮戦争(1950─53年)が平和条約ではなく休戦協定で終結したため、厳密に言えば、両国はいまだ戦争状態にある。

リベラルな文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は、10年近くに及ぶ保守政権下で凍結された北朝鮮との関係を改善したいと望んでおり、開会式や閉会式での合同入場や、1つの国家として一緒に競技に臨む合同チーム結成など、五輪で南北融和を示すことを提案している。

だが、韓国アイスホッケー連盟は体育省から「準備をしろ」と言われた以外に詳細は伝えられていないと、前出の連盟幹部は明かす。

「正直言って、何が起きているのかさっぱり分からない。北朝鮮チームと話す手段がないため、『準備をしろ』というのがどういう意味なのか見当もつかない」

選手の登録枠や試合戦略、合同チームを率いるヘッドコーチの任命など、解決しなければならない問題は山積している。

「こうした極めて重要かつ基本的な問題は、何一つ話し合われていない。それなのに、3週間後にはオリンピックで初戦を迎える。信じられるか。まったくナンセンスだ」と同幹部は語った。

都・体育相は、登録枠を増やすため、韓国選手が外されることはないと主張し、アイスホッケー女子の合同チーム結成案を擁護している。

また、同チームを「コーチする権利」は韓国が有すると、都氏は国会で15日述べた。

懐疑的な世論

五輪開催地・平昌のある江原道の崔文洵(チェ・ムンスン)知事は、否定的な韓国世論について、歴代の保守政権下で冷え切った南北関係の影響かもしれないと語った上で、北朝鮮が五輪に参加したら、世論も変わるだろうと話す。

「過去9回の五輪で南北は合同行進を行い、世界から祝福を受けた。それに反対する人はほとんどいなかった」

だが、ソウルでエンジニアをしているという26歳のKim Daeさんは、合同チームをつくる意味が分からないと語る。

「何のための合同チームなのか、理解できない。オリンピックで異なる2つのチームが一緒にプレーするよう強制されているようにしか思えない。そもそもこの合同チームで誰が得をするのか」

世論調査会社リアルメーターによる8日の調査では、五輪期間中に北朝鮮代表団の滞在費などを支援するという韓国政府の計画には54%が賛成、41%が反対と答えた。

保守系議員たちは、潜在的な問題が政治的利益に値するのかと疑問を呈した。

「北朝鮮が平昌五輪を政治プロパガンダに利用しようとしていると、多くの人は懸念している」と、Kim Ki-sun議員は15日語った。「過去の五輪で合同行進した後、どのくらい平和は続いたのか」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Heekyong Yang and Josh Smith

[ソウル 16日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中