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合法化拡大で成長の大麻ビジネス 膨らむ商機に転身するITエリートたち

2017年12月12日(火)13時49分

12月6日、ITや金融セクターの高待遇な会社勤めを辞めて、急成長するマリフアナ業界へと数多くの起業家や投資家が転身している。写真は大麻サプリ。写真は9月、カリフォルニア州の麻薬見本市で撮影(2017年 ロイター/Lucy Nicholson)

アラン・ガートナー氏は2年前、シンガポールでグーグルのアジア太平洋地域の営業チームを率い、1億ドル(約112億5000万円)を超えるビジネスを動かしていた。

現在、同氏はカナダのトロントにある小さなオフィスで1日をスタートする。大麻ビジネスのブランドを立ち上げ、ヴェポライザー(吸入器)や水パイプなど、最大価格が335カナダドル(約3万円)する高価な吸引器具を販売している。

ガートナー氏は、ITや金融セクターの高待遇な会社勤めを辞めて、急成長するマリフアナ業界へと転身した数多くの起業家や投資家の1人だ。

米カリフォルニア州で20年前、医療用のマリフアナが初めて合法化されて以降、大麻関連ビジネスは他業種から有能な人材を集め、米投資企業から大規模な資金を呼び込むことで発展してきた。新しいコモディティー指数は、大麻の相場データさえ提供している。

自身のキャリアチェンジについて、今でも驚かれることがあると、ガートナー氏は語る。彼の母親からは、「グーグルで他の仕事はなかったのか」と、聞かれたという。

それでも、この業界に根強く残るタブーや法的リスクにもかかわらず、ガートナー氏は「トーキョー・スモーク」の最高経営責任者として、10カ月で1000万ドルの資金を調達した。

年間売上高が現在約80億ドル規模の合法大麻市場は、2021年までに3倍の226億ドルに達する予想だ、と同業界を調査するアークビュー・マーケット・リサーチは指摘する。

そうなれば、米国で最も収益を上げているスポーツ、ナショナルフットボールリーグ(NFL)を上回る可能性がある。NFLの昨年の売上高は約130億ドルで、2027年までの目標は250億ドルだ。

調査会社CBインサイツによると、ベンチャーキャピタルによるマリフアナ関連企業向け投資件数は今年、現時点で少なくとも27件に上る。2016年は10件、2015年は9件だった。

こうした資金流入は、米国の合法マリフアナ業界で働く15万人の給料支払いに役立っている、と大麻関連ウェブサイト「リーフリー」は試算する。この業界の労働者数は昨年比で2割増加している。

1本20ドルの大麻入りチョコレートを製造する「デフォンセ・ショコラティエ」の創業者、エリック・エスラオ氏は、1年ちょっと前までアップルのシニア・プロダクション・マネジャーだった。

マリフアナ業界に転身することで自身のキャリアに傷がつくことを恐れる気持ちもあったが、それでも飛び込んだ。

「大きなチャンスを目の前にして見逃すわけにはいかなかった」

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