最新記事

トルコ

「俺はISじゃない」と髭を剃るムスリムたち

ISISとの戦いの最前線では、髭を剃るか否かの決断が生死を分けかねない

2015年8月17日(月)17時30分
アイリッシュ・オガラ

商売繁盛 長い髭が男らしかった頃は理容室も暇だったが Laszlo Balogh-REUTERS

 トルコでは、自慢のあご髭を剃り落とし、ツルツルの顔になる男性が増えている。トルコの通信社ドーガンによれば、ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の戦闘員と見間違われないようにするためだ。

 エーゲ海内陸部マニサ県の理容師団体傘下の理容室にも、ISISかその支持者と思われないよう髭を剃りたいという客が殺到しているという。

 マニサ県理容師美容師協会の会長を務めるアリ・バトゥーはドーガンにこう語っている。「以前は髭が男らしいとされ、誰もが髭を伸ばしていた。おかげで理容師の商売が減ってしまったほどだ。だが今は、ISISのような残虐な集団の仲間とは思われたくないという客が増えている」

 昨年夏、ISISがシリアとイラクの国土のかなりの部分を支配下に置いて以来、地理的に近接するトルコの緊張も高まっている。先月、トルコ南部でISIS支持者によると思われる自爆テロで32人が死亡すると、トルコ政府もシリアにあるISIS支配地域への空爆を始めた。

 マニサに住むある男性は、テレビでISIS戦闘員の姿を見て、髭を短くすることに決めたとドーガンに語っている。「巷にはISISのニュースばかりだ。私の髭は以前もっと長かったが、今は短くしている。一緒にされたくない」

 昨年10月には英BBCが、トルコ南東部のディヤルバクルから同様の現象を伝えている。同市内でイスラム過激派と少数民族のクルド人勢力が激しく衝突したのがきっかけで、イスラム過激派を連想させやすい長い髭を生やしているのは危険と思われ始めたという。

 また米クリスチャン・サイエンス・モニター紙は昨年夏、ISISに忠誠を誓ったイスラム過激派グループの戦闘員が、髭を剃って一般人に紛れ込んで逃げるか、髭をそのままにしてISISに参加するか悩む様子をリポートした。

 髭がムスリム男性のシンボルではなくなる日も近いかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、予備役5万人招集へ ガザ市攻撃控え

ワールド

ウクライナ北部に夜間攻撃、子ども3人含む14人負傷

ビジネス

米国との関税合意は想定に近い水準、貿易多様化すべき

ビジネス

英CPI、7月前年比+3.8%に加速 24年1月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中