最新記事
地球環境

気候変動と生態系の危機が、さらなる環境破壊を招く...地球を襲う「三重債務危機」のメカニズム

2025年1月4日(土)16時23分
ベラ・ソンウェ(経済学者)、グイド・シュミットトラウブ(企業幹部)
地球環境を脅かす途上国の債務

sarayut_sy/Shutterstock

<債務の返済に苦しむ国の多くは気候変動にも脆弱で、環境・自然危機のツケが膨らむ悪循環に──。持続可能な成長のために今、我々がすべきことは?>

途上国144カ国のうち、多くが持続不可能な財政軌道にある──「債務・自然・気候に関する専門家報告書」を策定する独立専門家グループは、2024年10月に発表した暫定報告書でそう指摘した。

これらの国における債務返済の歳入に対する割合は平均41.5%。そのせいで、経済成長に不可欠な教育や医療、インフラ、技術革新への公的投資が著しく制限されている。

経済成長や財政柔軟性の向上がなければ、対外債務の返済は実行不可能になる。その結果、緊急で大規模な資本注入が必要になり、時には債務の免除を余儀なくされる。

途上国が直面する政府債務危機の悪化には、2つの関連要因がある。

第1の要因は気候変動だ。地球の平均気温は既に産業革命前と比べて1.2度上昇し、今後も10年につき、0.2~0.3度のペースで上昇すると予測されている。

この「気候債務」のツケは莫大だ。気候変動に対して脆弱な国々は、気候変動がなければ、現在より20%豊かになっていたはずだとされる。

第2の要因は生態系の危機だ。気候変動への重要な緩衝材である自然生態系は、人間活動で排出される二酸化炭素(CO2)の半分を吸収する。だが森林破壊や土地利用の変化のせいで、今や世界の森林地帯の大半でCO2排出量が吸収量を上回る。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中