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親の学歴・年収より影響が大きい!? 「子供の学力が上がった家庭」にたくさん置いてるあるものとは

2022年7月17日(日)11時00分
榎本博明(心理学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

知能には遺伝が強く関係しており、親の知能が子どもの知能に遺伝的に影響するわけですが、親とのやりとりを通して親の知能レベルの影響を子どもが受けるという意味では、親の知能は環境要因にもなっているのです。

親の社会経済的地位や学歴は、家庭の蔵書数(家にある本の冊数)にも影響するでしょうし、知的好奇心を刺激する文化的施設に子どもを連れて行くかどうかにも影響するでしょうし、読書や勉強に対する親の取り組み姿勢を自然に真似るという形でも影響するでしょう。

それらは、まさに家庭環境という意味での環境要因と言えます。

蔵書数が多いほど子供の学力が高い

世代間伝達というと、遺伝の力を思い浮かべて、どうにもできないことのように思いがちですが、このような環境要因に目を向ければ、やりようによっては子どもの言語能力の向上をいくらでも促すことができるとわかり、工夫や努力の方向性も見えてくるでしょう。たとえ親自身の社会経済的地位や学歴にハンディがあっても、そこをうまく補って、子どもにとっての好ましい環境要因を整えていくことができるはずです。

家庭の蔵書数が多いほど子どもの学力が高いというのは、さまざまな調査研究によって示されています。

たとえば、2017年に文部科学省によって実施された全国学力・学習状況調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づける調査報告書があります。それをもとに家庭の蔵書数と子どもの学力の関係について考えてみましょう。

その調査報告書では、家庭の蔵書数と子どもの学力との間にも、興味深い関係が見出されています。蔵書数の多い家庭の子どもほど、学力が高いのです。

「結局、親の学歴や年収が重要」というわけではない

たとえば、小学6年生のデータをみると、蔵書数が0~10冊の家庭の子どもよりも、11~25冊の家庭の子どもの方が学力が高くなっています。それよりも、26~100冊の家庭の子どもの方が学力が高くなっています。当然、101~200冊の家庭の子どもの学力は、さらに高くなっています。そして、201~500冊の家庭の子どもはそれ以上に学力が高く、501冊以上の家庭の子どもの学力が最も高くなっていました。

ただし、裕福な家庭ほど蔵書数が多いだろうし、蔵書数は親の社会経済的背景と関係しているのではないかというのは、だれもが思うことでしょう。

実際、データを確認すると、そうした関係は明らかにみられます。社会経済的地位の高い親の家庭ほど、つまり学歴や収入が高い親の家庭ほど、蔵書数が多くなっていました。

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