最新記事

韓国経済

韓国財閥系のLGとSKがEV電池で訴訟合戦 中国は漁夫の利狙う?

2019年11月30日(土)11時03分

漁夫の利

両社の訴状によると、米国の特許侵害訴訟で敗れた企業は、その特許を用いた製品の米国での販売を禁じられる可能性が高い。敗訴するのは1社の場合も、両社の場合もある。

両社は韓国でも互いを提訴した。

LGCは書面で、当該の特許を用いたデザインは不可能になると説明。SKIは、特許訴訟に負ければ同社の電池事業は「大打撃」を受けかねないとしている。

両社とも、現時点で供給に支障は来していないと説明した。

EV用電池業界で最初に頭角を現したのはLGCだった。08年には、世界初の大衆市場向けプラグインハイブリッド車となったGMのボルトに電池を供給する契約を確保。以来、テスラを含むほぼすべてのEVメーカーと取引関係を持った。

しかしLGCは従業者の大量流出と格闘してきた。報告によると、16年から18年にかけて1258人が他社に移籍。LGCはロイターに対し、16年以降にSKIに転職した人数は累計で訴訟を起こした今年4月時点の77人から、今では約100人に増えたと説明した。

両社の激しい確執に、韓国政府の当局者らも頭を抱えている。両社の評判に傷が付き、他国のライバル企業が漁夫の利を得て韓国企業からシェアを奪いかねないからだ。

韓国議員らは政府に介入を要請。成允模・産業通商資源相は10月、係争を注視しており、「国全体にとってプラスの結果」をもたらすため、いつ、どんな役割を果たせるか検討していくと述べた。

電池コンサルタントのビージェイ・キム氏は、VWが仲裁に入る必要があるかもしれないと言う。LGCとSKIの対立は電池供給を混乱させるだけでなく、VWにとっての納入業者同士が競争するのを阻害する恐れがあるからだ。

「だれ1人として両社の徹底抗戦を望んではいない」とキム氏は語った。

Hyunjoo Jin and Heekyong Yang

[ソウル ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州の防衛向け共同借り入れ、ユーロの国際的役割強化

ビジネス

現在協議中、大統領の発言一つ一つにコメントしない=

ビジネス

テスラの中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9

ビジネス

スイスABB、中国向けロボットラインアップ拡大 中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中