コラム

米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は?

2024年10月23日(水)11時00分

世論調査の数字から激戦州でハリスがトランプに逆転されたという報道も出ているが…… Rebecca Cook/REUTERS

<ハリスへの支持が離れていると報じられているが、その票がトランプに流れるとも言い切れない>

米大統領選の投票日である11月5日まで、残り2週間を切りました。8月にバイデン大統領から民主党候補を引き継いだハリス副大統領は、フレッシュなイメージを演出することに成功して、全国的な支持率も、激戦州での支持率もリードしていると伝えられていました。ですが、ここへ来て伸び悩むどころか、トランプ前大統領に逆転されているといった数字も報じられています。

過去30年以上にわたって米大統領選を経験してきた私には、この時期の数字の動きについては「絶対的な数字」を見ていては見誤る、そんな経験則が頭の中にあるのは事実です。僅差の場合は特に「数字の方向性」がモノを言う、そんな観点です。伸びている候補は、その伸びている勢いを投票日まで継続させることが多く、そうなると最終の世論調査は当てにならないというわけです。

そう考えると、ここへ来てのハリス氏の数字の低迷については、その傾向が続くのであればトランプ氏有利という見方が出ても不思議ではありません。ですが、アメリカで様々な立場のウォッチャーが指摘しているのは、「話はそう簡単ではない」ということです。

まず、世論調査については各大学、各調査機関、メディア各社が最新のノウハウを使って調べています。バイアスのかからないように、質問を工夫し、対象を調整し、聞き方まで注意深く行っています。経費も当然かけています。そうなのですが、昨今言われているのは「今回の世論調査はかなり信憑性が薄い」ということです。


なぜ有権者は「揺れて」いるのか?

それは「多くの回答者が真面目に答えていない」ということですが、彼らが不誠実なのかというとそうではなく、本当に心理的に「揺れ動いている」という可能性です。そんな揺れ動く心理が実際の本番における投票行動にも反映するだろう、そんな指摘もあります。

また、報道機関としては、現時点ではまだ「投票日までのCM販売が間に合う」段階です。例えば現地の25日金曜から始まる「大谷対ジャッジ」対決のワールドシリーズは、CM枠が全国とローカルに別れており、ローカル枠については、まだまだ選挙広告が入るはずです。となれば、CMを売るためには「大差」と報道するよりは、「僅差」としておきたいという動機があります。

僅差だが、有権者の心理は揺れているということであれば、両陣営ともに追加の資金を投下してCM枠を買ってくれるというわけです。そこに明確な不正はないとは思いますが、メディアとしては100億ドル(約150億円)単位のカネの飛び交う利害があることは否定できません。

では、なぜ有権者の反応が揺れ動くのかというと、そこには3つの問題があるようです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story