最新記事
シリーズ日本再発見

岡山・群馬の地方創生は、あの起業家が担っている

2019年08月07日(水)11時30分
井上 拓

ピエール・ユイグ《未耕作地》 2012 ©岡山芸術交流実行委員会 写真:市川靖史

<行政ではなく気鋭の経営者が、地方活性化をリードする時代になった。今なぜ増えているのか。どんな活性化をもたらしているのか>

9月27日から約2カ月間、岡山県岡山市で「岡山芸術交流2019」が開催される。岡山城や岡山後楽園周辺の徒歩圏エリアを会場とした国際現代美術展だ。3年ごとの開催で、今年が2回目となる。

同展では、市内の歴史・文化施設を散策しながら、世界で注目を集める現代美術家のアート作品に出合うことができる。2016年の初開催時には、人口70万人超の岡山市で述べ23万4080人の来場者数を記録した。フランス人の現代美術家ピエール・ユイグ氏をアーティスティックディレクターに迎えた今回も、インバウンドをはじめとする地域交流人口の拡大など、大きな期待が寄せられている。

意外かもしれないが、岡山芸術交流の総合プロデューサーは、アート界の著名人などではない。国内外で活躍する起業家、「アースミュージック&エコロジー」などのファッションブランドを展開するストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEOの石川康晴さんだ。

石川さんは、2014年に「石川文化振興財団」を設立。文化や教育に注力し、岡山をより活性化するべく、岡山芸術交流をはじめ、さまざまな活動に取り組んでいる。生まれ故郷であり、創業の地である岡山に恩返しをしたいとの思いからだ(同社は今も岡山市に本社を置いている)。

「岡山芸術交流では、子供たち、地域の人たちに創造力を提供したいと思っています。創造力は、AIなどと伴走していく人間に求められてくる力ですから。私が幼少の頃は、コンビナートやパン工場を社会見学していましたが、嬉しいことに現代アートを見ることも教育というフェーズに変わってきています」

すでに県内55校(前回は46校)を超える小・中学校が郊外活動や部活動等で鑑賞することが決まっている。地域の企業からも、社員のエデュケーションプログラムとして訪問ツアーの相談が数多く寄せられているという。

起業家が地域を盛り上げる。これは何も、岡山だけで起こっていることではない。

japan190807okayamagunma-2.jpg

ペーター・フィリッシュ ダヴィット・ヴァイス《より良く働くために》 1991 ©岡山芸術交流実行委員会 写真:市川靖史

会社を大きくして、税金を納める――だけでいいのか

起業家が文化や地域のパトロンとなり、地方活性化の推進を自ら担い、社会へ還元していくという機運は、日本各地で高まりつつある。群馬県前橋市もその1つだ。岡山の石川さんも「呼吸が合っています」と評する取り組みである。

アイウエアブランド「JINSジンズ」の代表取締役CEOである田中仁さん。故郷である群馬の起業家育成と豊かな地域社会の実現に情熱を傾ける起業家だ。会社経営とは切り分け、私財を投じて「田中仁財団」を設立した。

社会貢献の芽生えは、2011年6月にさかのぼる。大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングが起業家を表彰する「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」の日本代表に選ばれ(石川さんも2013年に選出されている)、モナコで開催された世界大会に参加。約50カ国の起業家との対話や「個人の社会貢献活動」の評価項目などを通じて、起業家として、自らの使命を改めて考える大きな契機になったという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、原油高続けば利下げ27年に先送りも=シカゴ

ワールド

イスラエルとレバノン協議開始、米国務長官「歴史的機

ワールド

トランプ氏、イラン協議「2日以内」にパキスタンで再

ワールド

印首相、トランプ氏と電話会談 ホルムズ海峡開放の重
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中