コラム

「増税原理主義者を打破する機会」トランプ関税は日本の国難、だが災い転じて福となすかもしれない

2025年04月15日(火)18時55分
石破茂首相

首脳会談後、ドナルド・トランプ米大統領との共同記者会見に臨んだ石破茂首相(2月7日) REUTERS/Kent Nishimura

<歴史的な経済政策の転換が実現しつつある。関税引き上げにより、日本の製造業の環境はかなり悪化するだろう。いま日本が打てる具体的な対策とは何か>

4月2日にトランプ米大統領が「相互関税」を発表してから、世界の金融市場は大混乱に陥っている。大幅な関税賦課によって米国の平均関税率(関税収入/輸入金額)は20%を大きく超えるとみられ、これは戦前の1930年代以来の水準まで一気に跳ね上がることを意味する。

1950年代から続いた自由貿易促進を通じたグローバリゼーションは、第一次トランプ政権で既に逆回転が転じていた。この動きを第二次トランプ政権は一気に進めて、貿易活動そしてサプライチェーンによる企業の水平分業が、政治権力によって強制的に歯止めをかけられつつあるということである。

トランプ大統領の真意を本当に理解するのは難しいが、歴史的な経済政策の転換が実現しつつあるということは確かだろう。そして、企業行動への極めて懲罰的な関税引き上げは、米国経済自身の成長にブレーキをかける自傷的な政策である。

少なくとも年間6000億ドル(GDP2%に相当)の増税が年央に実現するのだから、関税政策が長期間続けば、米国経済には急ブレーキがかかり、ゼロ成長に至ると予想される。

4月3日からの世界的な株式市場の急落は、懲罰的な関税の大幅引き上げ発動によって、米国を含めて、世界経済が不況に陥ることを適切に織り込んだ値動きと位置づけられる。今後の世界経済の動向は、トランプ政権の関税賦課政策が修正・撤回されるか否かが大きく左右する。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

諮問会議議員に若田部氏ら起用、「優れた識見有する」

ビジネス

米ゴールドマン、来年はマネジングディレクター昇進が

ビジネス

実質消費支出9月は+1.8%、5カ月連続増 自動車

ワールド

ロシア南部の製油所が操業停止、ウクライナ無人機攻撃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story