コラム

もはや「リベラルvs保守」では語れない...現代社会の「対立構造」は、ここまで複雑化・多様化している

2023年12月13日(水)17時47分
米ニューヨークでのパレスチナ支援デモ

ANDREW KELLY―REUTERS

<政党の支持母体は分裂し始め、地域間でも地域内でもさまざまな「断層」が露わになった現代、政治には何が求められるのか>

パレスチナ情勢の悪化は、アメリカが抱える矛盾を図らずも露呈する形になった。これまでアメリカはイスラエル支援という点で政党を問わず一致してきたが、今回は様子が異なっている。

紛争を受けて各地でイスラエルを批判するデモが発生しているが、興味深いことにイスラエルに懐疑的な人たちの結構な割合が民主党支持者とされる。民主党はユダヤ系を支持母体の1つとしてきたリベラルな政党であり、バイデン政権は躊躇なくイスラエル支援を表明したが、一連のデモは足元で地殻変動が起こっていることを示唆している。

来年の大統領選をめぐっては、ケネディ家出身の急進左派で、反ワクチン主義を掲げるロバート・ケネディJr.氏が民主党の指名候補争いから撤退。無所属で出馬すると発表した。これによって民主党支持者の一部がケネディ氏に流れ、バイデン氏の立場がより厳しくなる可能性も指摘されている。

一方、共和党も分裂寸前の状況にある。同党は主に資本家や経営者、ビジネスパーソンが支持しており、保守的な側面を持つ一方、ビジネス優先という観点から、変化に対しては寛容な政党であった。だが共和党は年々保守化の度合いを強めており、穏健派の党員とトランプ支持者との間で抜き差しならない対立が生じている。

地域間での分断に加え、各地域内でも分断が

地域間の関係性も一層複雑化している。ハイテク企業が集積し、再エネに積極的な西海岸と、政治・金融の中心地である東部、自動車の製造拠点であり、かつ世界有数の穀倉地帯である中西部、石油産業を中核としたテキサスなど南部では、あまりにも状況が違いすぎて、もはや一つの国家として利害を調整するのが難しくなっている。

加えて各地域の中は一枚岩なのかというとそうではない。アメリカでは所得が著しく上昇しているものの、高額所得者が平均値を引き上げているという側面が強く、豊かさの象徴とされる西海岸においても、ハイテク関係の高いスキルを持つ労働者とそうでない労働者には埋めようのない格差が生じている。

これからのアメリカは、思想や人種による対立、地域間の対立、地域内における所得格差による対立というあまりにも複雑な方程式を解いていかなければならない。現在のところ有力な解決策は見えておらず、誰が次期大統領になるにせよ、社会が混沌としてくる可能性は高い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米司法省反トラスト局トップが辞任、トランプ氏任命か

ビジネス

EXCLUSIVE-米CME、台湾と香港でアルミ倉

ワールド

トランプ政権、温室効果ガス規制の法的根拠撤回 車の

ワールド

仏27年大統領選、ルタイヨー元内相が出馬表明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story