ニュース速報

ワールド

英閣議、EU離脱協定案を承認 議会可決は不透明

2018年11月15日(木)10時57分

 11月14日、英政府は臨時閣議で、欧州連合(EU)からの離脱協定素案を承認した(2018年 ロイター/HENRY NICHOLLS)

[ロンドン 14日 ロイター] - 英政府は14日の臨時閣議で、欧州連合(EU)からの離脱協定素案を承認した。メイ英首相は今後、議会の承認に向けて取り組むことになる。

メイ氏は5時間にわたる閣議後、首相官邸前で「内閣として、政府が離脱協定素案と政治宣言の概要を承認すべきとの決定に至った」と説明。「この決定が英国全体の最善の利益だと強く信じている」と強調した。

メイ氏は、離脱派と親EU派双方の支持を取り付けることを期待している。ただ、EUからの完全独立を求める離脱派が待ち構える議会で承認されるかは依然不透明だ。

メイ氏は英議会での採決の日程を明らかにしていない。承認には、全650人の議会で約320人の支持が必要になる。

複数記者によると、この日の閣議で保守の離脱推進派は離脱協定案に激しい怒りを示した。そのため、メイ氏の不信任投票を呼び掛ける可能性があるという。

あるEU懐疑派議員は、閣議決定は全会一致ではなかったと指摘。また、ブレグジット反対派の多くは、EU加盟国としての恩恵を何も教授できない一方で、EU規定の順守が求められることへの懸念を示している。国民投票の再実施を求める声もある。

メイ政権を支える北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、北アイルランドを英国の他の地域と同じように扱わない案には反対するとしている。

英国の将来像は見通せていない。円滑な離脱から草案拒否までさまざまな可能性がある。草案拒否なら首相辞任にもつながりかねず、合意なき離脱のほか、国民投票の再実施も考えられる。

<アイルランドとの国境問題>

離脱交渉では、英・北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境問題が最大の障害になってきた。英国とEUは、厳格な国境管理をせず、同じ国のように自由に行き来できる状況を保つことでは一致している。

EUと英国が一致した離脱協定案では、移行期間中に新たな通商協定で合意できない場合、アイルランド国境の管理厳格化を回避するためにどのような措置を取るかを2020年7月に決定する。[nL4N1XP5K5]

英国は、2020年末の移行期間の延長、もしくは、英国全体を網羅する関税協定のどちらかを選ぶ。こうした合意において、北アイルランドはEUの関税ルールや生産基準に近くなる。

移行期間終了後に合意を変更または廃止するには、英国とEU双方が同意する必要がある。

厳格な国境管理の回避を望むアイルランドのバラッカー首相は、離脱協定案は同国政府の優先事項を満たしていると指摘した。

一方、英議会では多数の離脱推進派議員が、永遠にEUに縛られる状態を避けるために英国が一方的に緊急措置を廃止できるようにすべきと主張しており、議会での承認は不透明だ。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送

ワールド

トランプ氏、カザフ・ウズベク首脳を来年のG20サミ

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

ウクライナ、複数の草案文書準備 代表団協議受けゼレ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中