ニュース速報

ビジネス

トルコ大統領、仏製品ボイコット呼び掛け 風刺画引き金に対立深まる

2020年10月27日(火)08時23分

トルコのエルドアン大統領は26日、国民に対しフランス製品をボイコットするよう呼び掛けると同時に、欧州連合(EU)首脳に対しフランスのマクロン大統領の「反イスラム」政策を止めさせるよう訴えた。写真はエルドアン大統領。3月5日撮影(2020年 ロイター/Pavel Golovkin)

[パリ/アンカラ 26日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は26日、国民に対しフランス製品をボイコットするよう呼び掛けると同時に、欧州連合(EU)首脳に対しフランスのマクロン大統領の「反イスラム」政策を止めさせるよう訴えた。

フランスでは、教師が表現の自由に関する授業でイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を使用した後、イスラム過激派とみられる容疑者に首を切られ殺害される事件が発生。これを引き金に、クウェートやサウジアラビアでフランス製品や小売チェーンのボイコットする動きが広がったほか、バングラデシュではこの日、マクロン大統領に抗議するデモが行われた。

エルドアン大統領は、イスラム教の預言者ムハンマド生誕を記念する週の開始にあたり演説し、欧州首脳はマクロン大統領の「反イスラム」政策をやめさせる必要があると指摘。「トルコ国民に対し、フランスのブランドを支援することも、購入することもしないよう呼び掛ける」と述べた。

エルドアン大統領は24日、マクロン大統領について、イスラム教への考え方を巡って「精神的な治療が必要」と批判。これを受け、フランス政府は駐トルコ大使を呼び戻し、両国の軋轢が高まっている。

トルコとフランスはいずれも北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、シリアとリビアの内戦や、東地中海の領域、ナゴルノカラバフ紛争などの問題を巡って対立している。

エルドアン大統領は3日連続で、マクロン大統領には「精神的な治療が必要」と発言。「フランスではトルコ製品を購入するなとの声が出ている。私もまったく同じで、すべての市民に対し、今後絶対にフランス製品を助けたり購入してはならないと呼び掛ける」と述べた。

これに対し、欧州連合(EU)域内のフランス同盟国はマクロン大統領を擁護。イタリアのコンテ首相はマクロン大統領との「結束」を表明。ドイツのマース外相はエルドアン大統領によるマクロン大統領への個人攻撃を批判したほか、オランダのルッテ首相は表現の自由に関するフランスのスタンスを支持すると言明した。

トルコの統計局によると、フランスにとってトルコは10番目に大きな輸出市場。トルコにとってフランスは7番目に大きな輸出市場となっている。フランス車はトルコでも特に売れている。

在アンカラのフランス大使館は26日遅く、トルコ国内にいるフランス人に対し、国内外の情勢を踏まえ「強く警戒」するよう呼び掛けた。公の場での抗議活動や集会を行わないよう求めている。

マクロン大統領は「イスラム分離主義」がフランス国内の一部のイスラム社会を乗っ取ろうとしているとして、イスラム分離主義と戦う意向を示している。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

官僚時代は「米と対立ばかり」、訪米は隔世の感=斎藤

ビジネス

全国コアCPI、3月は+2.6% 年度内の2%割れ

ワールド

ロシアが政府職員の出国制限強化、機密漏洩を警戒=関

ビジネス

G20、米利下げ観測後退で債務巡る議論に緊急性=ブ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中