コラム

問題は言論弾圧ではなく「メディアの歪んだアジェンダ設定」だ

2015年07月02日(木)18時20分

 おかげで、わかりやすく派手な見出しの立つ憲法問題や原発問題は国会でもメディアでも取り上げられるが、むずかしい安全保障やエネルギー政策はアジェンダから除外され、政治家も国民もほとんど知らない。このため国会審議は中身のない憲法論争に終始し、政治家の失言を追及する「劇場政治」になる。

 これは商業メディアの営業政策としては、やむをえない面もある。インターネットの影響力はまだ弱いが、マスコミがこうして排除してきたアジェンダを取り上げるところに意味がある。そしてこういう情報は、SNSやスマートフォンなどで若い世代には瞬時に伝わる。紙の新聞しか読んでいない政治家は、そのうち彼らに見捨てられるだろう。

プロフィール

池田信夫

経済学者。1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。93年に退職後、国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラ研究所所長。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『アベノミクスの幻想』、『「空気」の構造』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。池田信夫blogのほか、言論サイトアゴラを主宰。

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