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日本政治

参政党の躍進は民主主義の脅威か、健全なダイナミズムか?...「イギリスの失敗」が照らす参議院の存在意義

2025年09月17日(水)11時00分
高宮秀典(拓殖大学政経学部助教)
参政党・神谷宗幣代表

参政党・神谷宗幣代表(2025年7月21日都内にて) REUTERS/Kim Kyung-Hoon TPX IMAGES OF THE DAY


<「静かな怒り」が政治を揺らす...。2016年のブレグジットと参政党の奇妙な共鳴について>


参政党の衝撃

2025年7月、「良識の府」こと参議院で参政党が大躍進を遂げ、話題となった。

参院は選挙区も比例区も範囲が広く、衆院選で有効な個人後援会では十分に集票できない。そこで効果的なのが知名度やネット選挙であり、参政党のような新興のポピュリズム政党が議席を得やすい。都市部の中選挙区制など、全体的に比例的な選挙制度も追い風となる。

参院はポピュリズムの促進剤なのだろうか──参議院研究者として、そう考え始めたとき、イギリスのEU離脱(Brexit)を論じたある新刊と出会い、参院の機能をより広い視野から考察する視座を得た。

その本は、2025年5月に刊行された、『わかりあえないイギリス──反エリートの現代政治』(若松邦弘著、岩波新書)である。本書では、小政党の参入を防ぐ衆議院の小選挙区制が、逆説的にポピュリズム(イギリス独立党、ファラージ党首)を涵養し、国民投票でのEU離脱派勝利を招いた、と指摘されている(*)。


比例制に比してその小選挙区制という選挙制度に内在する弱い応答性、言い換えればエリート性は、今日、有権者に説得力を持たなくなっている。その歴史的な構造は、そもそも有権者と代表との分離を特徴とし、代表が有権者の納得や信頼を得ることを必ずしも想定していないゆえに、有権者の政治への疎外感が高まりがちである。(『わかりあえないイギリス』p.5)



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アメリカ・メリーランド州ナショナルハーバーで開催された「保守政治活動協議会(CPAC)」で演説するナイジェル・ファラージ(2023年3月3日)Kyle Mazza via Reuters Connect

一方、日本に視点を移すと、今回の参院選で躍進した参政党の支持者は、Brexitの支持層とおそらく類似している。

具体的には、往年の国家的威信を憧憬し、既存政党から離反した保守層や、経済のグローバル化に取り残された労働者(日本では、非正規雇用の割合が高い就職氷河期世代)などである。それだけに英国の経験は示唆に富む。

では、同じ小選挙区制国の日本は、政治制度の模範としてきたイギリスの「失敗」から何を学べるだろうか。

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