初めて金融機関出身者が経団連会長に選ばれた意味

状況が変化したのは、2006年に会長に就任したキヤノンの御手洗冨士夫氏あたりからである。同社は製造業ではあるが精密機器メーカーであり重厚長大産業ではない。また御手洗氏は創業家出身であり、典型的な財界人とはタイプが異なっている。

御手洗氏の後任として選ばれたのは住友化学会長の米倉弘昌氏だが、ここで非財閥企業出身という慣例が明確に破られることになった。その後、しばらくは製造業出身者が続くのだが、今回、初めて金融機関出身者が会長に選ばれた。

今回の人事は現会長の十倉氏(住友化学会長)による指名であり、同氏は「人物本位で選んだ」としているものの、日本の産業構造の変化が背景にあるのは間違いない。

製造業に従事している労働者は約1000万人と全体の6分の1まで低下している。企業全体が稼ぎ出す利益も非製造業が製造業を大きく上回っており、日本の中核的な産業はサービス業と言ってよい状況だ。

それでも製造業の賃金は相対的に高く、円安の進展で輸出産業の業績が拡大し、賃金が伸びることで消費が増える期待もあった。だが、このところ激しさを増している円安は製造業の業績回復にはつながっておらず、むしろ金利上昇をもたらし、金融機関の業績拡大が予想される事態となっている。こうした時代に保険会社出身者が経団連トップに就任するのは、やはり時代の要請と考えてよいだろう。

既得権益を死守するだけでは経済界の地盤沈下は続く
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