国と地方を合わせた公費負担は17兆円に迫る勢いであり、この金額と比較すれば防衛費(約5.3兆円)など少額予算にすぎない。年金と医療への支出は他の予算を圧倒しており、消費税の導入や増税も、全ては増え続ける医療費と年金を支えるために決断された。

政治の側から見れば、この制度は強大な支配力の源泉でもある。毎年43兆円もの支出があり、これをどのように割り振るか、全て政治が決定できる。自動車産業にも匹敵する規模の市場を政府のさじ加減一つでコントロールできるという点では他に類を見ない。

この仕組みは戦後の自民党支配の根源であり、抜本的な制度改革の議論はある種のタブーでもあった。こうした背景を考えれば、見直しとも取れる発言で多くの関係者が戦慄したのもうなずける。

医療費には年金のような積立金が存在せず、保険料収入や国庫補助が減ると、すぐに財政が立ち行かなくなるという弱点がある。高齢化と少子化で医療財政は逼迫しており、何らかの見直しは必須とも言われる。菅氏の発言は失言ではあったが、不都合な真実を示したとも言える。

<本誌2021年1月26日発売号掲載>

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