人は長く住んだ土地に情緒的な愛着と絆を覚える。そして写真家の場合、それが自らのプロジェクトになることが往々にしてある。今回紹介するイラン人のInstagramフォトグラファーもそんな一人だ。多感な10代半ばから10年間、そして現在も、カスピ海に面したイランのギラン州州都ラシュトに住み続け、南カスピ海地域を勢力的に撮り続けているハシャヤール・ジャバマーディだ。

 イラン側のカスピ海は、単に塩湖の湖岸地帯というだけではない。山岳地帯でもあり、降雨量が多い。長い歴史の中で諸民族が興亡したところでもある。そのため、中部、南部のイランとは異なる文化生活様式を持っている。また、カスピ海沿いはリゾート地として知られるが、同時に、イランの中でも経済発展が遅れ、貧困にあえいでいる人が多い土地でもある。ジャバマーディは、そんな変化に富む南カスピ海の風土と文化、そして、その地で日々の生活に困窮している人々の日常に焦点を当てたいという。

【参考記事】シャガールのように、iPhoneでイランを撮る

 まだ24歳ながら、構図の決め方と、光と影の取り入れ方が巧みだ。その中で、主な被写体である人物は、何か抑え込まれたような感情を、本人たちも気づかないまま静かに解き放っている。そこには、一瞬にして被写体の表情や、感情の静なる動きを切り取る「ストールン・モーメント」とも言われる技量が使われている。

 だが同時に、むしろ、彼の人懐っこさを武器にしたコミュニケーション、あるいは自分の存在を知らせた後、被写体に溶け込んでからのストールン・モーメント的な撮影パターンも多い。一度、カスピ海で撮影を共にしたことがあるが、チャンスがあればすぐ大胆にかつ親密的に人に接していた。その中で彼は、半ば無意識的に決定的瞬間を探っていたのである。

息子が刑務所にいるボートマン
本格的に写真を学んだ経験はない