[ブリュッセル 12日 ロイター] - キャメロン英首相は欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票を2017年末までに実施すると約束しており、残留への支持を得るためにはEUに改革を実行させる必要がある。EU内で一番人気の首脳とは程遠いキャメロン氏だが、手を差し伸べてくれる仲間には事欠かないだろう。
EU加盟28カ国の大統領や首相、EU関係機関はいずれも、EU統合推進に反対する英国の伝統的な姿勢を苦々しく思いながらも、英国がEUにもたらしている経済的、地政学的、軍事的影響力を失いたくはない。
こうした仲間達は、17年末の期限を待たずに国民投票を実施するようキャメロン首相に迫っている。背景にあるのはキャメロン氏が先週の総選挙で再選された余勢を駆って与党保守党内のEU懐疑派を屈服させられるとの期待や、17年に予定されるフランスとドイツの総選挙の前にEUの将来をめぐる不透明感を解消しておきたい、との思いだ。
ポーランド前首相のトゥスクEU大統領は、キャメロン氏が抱く懸念の多くを共有していると述べたことがある。大統領は改革に向け欧州委員会の合意形成に重要な役割を果たすだろう。
スウェーデンのカール・ビルト外相はロイターに対し、「EUは心を開いてキャメロン氏に耳を傾けなければならない。大掛かりな合意が必要であり、そこではトゥスク氏がキーパーソンになる」と語った。
ユンケルEU委員長は、自身の委員長就任をキャメロン氏が昨年阻止しようと試みただけに、他の関係者に比べてキャメロン氏に好意を持ちにくい。
ユンケル氏は英メディアの激しい個人攻撃を忘れ得ないかもしれないが、それでも許しの姿勢で英国に「公正な扱い」を申し出ている。
<欧州委員会内の味方>
欧州委員会内では、フランス・ティメルマンス第1副委員長(規制・組織関係・基本権担当)とジョナサン・ヒル委員(金融安定・金融サービス担当)の2人がキャメロン氏の味方として浮上しそうだ。
キャメロン氏は公約として、EUの官僚主義を排し、国家主権を強め、ユーロ圏を含む欧州市場に対する英国のアクセスを確保し、貧しい加盟国からの移民をめぐる国民の懸念に対処することを掲げている。
ティメルマンス氏はオランダの元外相で、英国の自由貿易推進の姿勢や、EU共通市場への反理想主義的アプローチに共感を寄せている。既にEUの法制定手続きの簡略化や国家の権限回復、EU運営体制の簡素化といった計画を司っている。
長く欧州委高官を務めた欧州政策研究センターのマイケル・エマーソン氏は「ティメルマンス氏の取り組む課題はキャメロン氏への贈り物にほかならない」と語る。
英国選出のヒル委員はキャメロン氏の古い親友で、金融サービス面で残っている加盟各国による単一市場への参入障壁の撤廃を担当している。実現すれば、キャメロン氏はこれをEU残留支持の根拠として国民に売り込めるだろう。
EUにおけるキャメロン氏像は怒りっぽく、国内の欧州懐疑派メディアを警戒し過ぎているというものだが、ヒル氏はそれと対照的なスタイルでEU関係者らを魅了してきた。彼自身、自らを友人同志をつなぐ仲裁者と見ており、先月はロイターに対し「ブリュッセルの事情を英国に説明し、英国の事情をブリュッセルに説明する」と語った。
<各国首脳>
キャメロン首相はメルケル・ドイツ首相にはほとんど逆らえない。一見したところ、両者の関係は友好的ではない。キャメロン氏の保守党は2009年に欧州議会の中道右派グループを脱退して以来、メルケル首相に反対するドイツ欧州懐疑派と手を組んでいる。
しかしメルケル首相としても、英国を欠けばEUの力は大きく損なわれると考えており、その思いはフランスのオランド大統領も同じだ。
社会主義者のオランド氏が保守派のキャメロン氏とそりが合わないのは無理もないが、英仏両国は欧州の2大軍事勢力として固く結びついている。しかもフランスは他のEU加盟国と同様、英国が抜ければEUにおけるドイツの支配的立場が拡大すると危惧している。
キャメロン首相はEU内の労働者の自由な移動という基本権を制限したい意向だが、ユンケル委員長、オランド大統領、メルケル首相の3者はいずれも、それは期待できないと明確に釘を刺している。移動制限にはEU基本法の変更が必要になり、フランスでは国民投票に掛ける必要がある。オランド大統領は、この提案にフランス国民の支持が得られるとは考えていない。
キャメロン首相はEU首脳会議の場で、伝統的に仲の良い北欧諸国やオランダ、アイルランドを味方に付けられるだろう。また東欧諸国の一部も、EU加盟に手を貸してくれたとして英国に恩義を感じている上、英国と米国との結び付きがEUのロシアに対する防波堤の一角を成していると考えている。
もっともトゥスク大統領を含め、東欧諸国首脳は労働者の自由な移動を制限する措置には抵抗しそうだ。
<国民投票を急げ>
EU閣僚理事会の法律サービス責任者を務めたことのあるジャン・クロード・ピリス氏によると、キャメロン首相が望む改革の大半は小幅な法律上の措置によって達成できる。国民投票までに時間が限られていることを踏まえれば、より大きな改革については、将来的に基本法を改正するとの約束を取り付けるのが精いっぱいかもしれない。
ピリス氏は、キャメロン氏にとって最も良いのは17年4月のフランス総選挙より前に国民投票を実施することだと言う。
ピリス氏は、今年7月からEUのベテラン組であるルクセンブルクがEU議長国に就き、次いで来年1月からは英国と仲の良いオランダが就くと指摘。「幸せな巡り合わせだ。キャメロン氏は国民投票を急ぐべきだ。またとない楽な状況なのだから」と話した。
(Alastair Macdonald記者)