[東京 12日 ロイター] - 日銀が公表した量的・質的金融緩和(QQE)の検証レポートのなかで「マネタリーベース」に言及しなかったことが、波紋を呼んでいる。市場の一部では、日銀がQQEの枠組み変更に向けた布石を打ち始めたとの観測が浮上した。
ただ、日銀はQQEのインフレ期待押し上げ効果に手応えを感じており、現時点では枠組み変更に否定的とみられる。
日銀企画局は今月1日、2013年4月に導入したQQEについて、この間に実質金利を1%ポイント弱押し下げ、経済・物価に対して想定に沿った影響を与えているなどとした検証結果を公表した。
QQEが経済・物価の改善に一定の効果を発揮したと定量的に説明を試みた。だが、市場の一部で注目されたのは全くの別のポイントだった。それは、日銀の発表したリポートの中に「マネタリーベース」という文言がなかったことだ。
QQEは長期国債の買い入れを中心に、マネタリーベースを年間約80兆円増加させ、2%の物価安定目標の早期実現を目指す政策。その検証からマネタリーベースの増加額と物価上昇率の関係が抜け落ちており、市場では「日銀自ら、量と物価には有意な関連がないと認めたに等しい」(国内金融機関)と解釈する向きもある。
また、日銀が年間80兆円も残高を増加させる大規模な国債買い入れを続ける中、市場には国債買い入れはいずれ限界を迎えるとの見方がくすぶっている。
市場の一部では、今回の日銀による検証は「マネタリーベース拡大を中心とした現在の枠組みを、日銀が変更するための布石ではないか」(同)との観測が浮上。次の一手として、超過準備への付利(現行0.1%)の引き下げなどもささやかれている。
しかし、現時点で日銀はQQEの枠組み変更に否定的だ。検証でマネタリーベースに触れていない点についても、具体的な裏付けとなる国債買い入れの効果を推計しており「量的効果についても分析している」(幹部)と説明する。
検証では、QQEの効果として実質金利の低下を強調。中でもインフレ期待の押し上げに寄与したことを重視している。
大規模な国債買い入れによる名目金利の押し下げ効果もさることながら、QQEの狙いであるインフレ期待の押し上げは、物価2%実現に対する日銀の強いコミットメントと、それを裏打ちする大規模な金融緩和というQQE全体の成果と「自己評価」している。
また、物価2%目標の実現には「さらなる予想物価上昇率の上昇が必要」と検証の中で日銀自ら指摘している。仮にQQEの枠組みを変更すれば、期待に働きかける効果が、むしろ後退してしまう可能性もあると日銀内では認識しているもようだ。
もっとも、インフレ期待の変化を直接把握する方法がないことは、日銀も認めている。今回の検証でも、QQEがどのような経路で期待に影響を与えているのか明確な説明はない。
目標達成に向け、日銀内では現行の枠組みにとらわれず、あらゆる選択肢を検討しているとみられるが、どの手段を決断するのかは、インフレ期待のさらなる引き上げにつながる手法は何か、という判断に大きく左右される可能性がある。
(伊藤純夫 編集:田巻一彦)